せーんぱっ！？

後輩 ページ16

道端で。歩道の真ん中で。
抱き合っていればそりゃいい見せ物で
けれどそれに気がついているのかいないのか
俺を今抱きしめている細っこい腕には
ぎゅうぎゅうと力が込められる。
そんなに力入れなくてもどこにもいかないよ
と告げてもなお緩まない力と腕に
思わず笑ってしまう。

なにを抱えているのかはわかんないけど
そこまでお見通しなエスパーにはなれないけど
それでも彼女が今どんな気持ちなのかくらい
分かっているはず。

さみしいね、と言えばこくんと頷く頭を見て
愛おしさが込上げる。
どうすればそれが解消されるかなと
考えるけれどきっと俺にだけ向けた気持ちでは
ないのだろうから難しいなぁと頭をひねる
松田をここへ呼ぼうかな、と思ったけれど
なんだかそれは嫌で。
今はこんな可愛いAを独り占めにしていたい
そんな気分だ。

数分ほど考えた結果、めちゃくちゃに嫌がられるかもしれない方法が思いつく。
まぁそれで笑顔になってくれたら嫌がられてもいいんだけど。

萩｢よ、っと。｣

俺の背中と腰に回していた腕をちょっとばかし
強引にはぎとれば、嫌だ、って小さな声がもれる。
だぁいじょうぶ、と言い聞かせながらその腕を
俺の首へと回させて準備完了。

萩｢じゃあ帰ろっか｣

そのまんま体を持ち上げてやれば
言わいる、縦抱き状態。つまりはだっこ。
これはこれでだいぶ見せ物ではあるけれど
いつまでもここにいる訳には行かないし
かといってAはまともに歩けなさそうだし。

俺の腕に座る形で抱かれているAは
ほんの少しびっくりした表情を浮かべたけれど
落とさないで、なんて言ってそのまんま
その頭を俺の肩口に預けた。


この状態で、キスのひとつも
愛の囁きひとつもしなかった俺の理性を
全力で褒めてやりたい。頑張った、俺。

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