【HQ】烏野の「姫烏」短編集 (ページ6)

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夢中になれるもの3 ページ6

「─────」

真っ赤な顔で目を見張りこちらを見つめる翔陽くんを真剣に真っ直ぐ見つめ返す。

その二人の間を爽やかな風が通り抜けていき、数秒間黙って見つめ合ったまま。まるで時が止まったかのようだった。
その静寂を先に破ったのは翔陽くんで、自分の手を握る私の手をさっきの私のように少しだけ力を入れて握り返す。

「…………うん、わかった。今なんかよりもっとずっと俺に夢中になってもらうから、覚悟しとけ！」

満面の笑みと共に貰った返答に、今度はこちらが顔を赤くする番だった。私の様子に少し冷静さを取り戻したのか翔陽くんは首を傾げた。
「？どうしたA？」
「えっ！？あ、うん！あ、あのね！？わかってるから。私、今の、「翔陽くんのバレー」についてだってちゃんとわかってるんだけど…………その。今の、なんか凄くストレートに告白されたみたいで……ちょっと恥ずかしくなっちゃって……ご、ごごごめんね変な事言って………！」
そう言って翔陽くんの手を離した。なんでこんな事考えたんだ恥ずかしい……！と私は手で自分の顔の熱を逃そうと煽ぐ。
「………………？…………っ！！！！」
焦る私に翔陽くんは意味を考え込んでいたようだが、漸くどういう意味か気付いたらしい。戻った冷静さは再び何処かへ飛んでいったようでまた真っ赤になると、わたわたとしだした。
「う、あ、いや、その……！バレー、うんバレー！！バレー、なんだけど…………その……」
そしてそこまで言うと視線を私からは外し声も小さくなる。聞き取れなくなって私は首を傾げた。
「？翔陽くんなんて？きこえな───」

「バレーもだけど！……その意味でも夢中になってくれたら、嬉しい」

一旦大きくなった声は最後はやはり小声になったが、今度ははっきりと聞こえた。驚いて私が目を見張ると──

「………………わあああ！もう！ちょっと！！！俺走ってくる！！！！！！」
「えっ！？走るって、翔陽くんまだ着替えてな……行っちゃった…………」

翔陽くんは叫ぶと凄い勢いで走り出し部室を出て行ってしまった。
せめて着替えてからにすればいいのに、と思いながらそれを見送る事しか出来ず思わずぽかんとして立ち尽くす。

そして、改めて翔陽くんの言葉がリフレインする。

「…………っ、なんかもう、翔陽くんストレートな爆弾発言ばっかり…………」

熱が籠る両頬を両手で覆っては、これからの日々が別の意味でも大変になりそうだと私は早る鼓動を抑えるのに必死だった────