決勝戦 プロローグ 4 ページ22
「!あ、あの牛島さ───」
告げられた言葉に反射的に何かを言おうと思って顔を上げる、が。
牛島さんと目が合った瞬間に私は視線を勢いよく顔ごと下へ逸らした。顔に熱が上る。
待って待って。ちょっと待って何これ。予想以上にすごく意識してしまう……!!えっ何これ!?
っていうか今のは失礼だったかも、と思うとより焦る。とにかく何かを言わないと。
「あ、あの、えっと、えーっと……………………か…………勝つのは、烏野です!負けませんから……!!」
必死に絞り出して出たのはこれだった。これはこれでどうなんだと内心頭を抱える。より顔を上げられなくなった。わーどうしよう!?と思っていると、上からふっと牛島さんが笑った気配がして目を丸くする。
「そうだな、ここに負けるつもりで来ている奴は誰もいない。お前は一貫してずっとそう言っていたな。正直、今回も青城と戦う事になると思っていたが───」
牛島さんはそこで言葉を止めた。私もようやくゆるゆると顔を上げる。牛島さんが見ていたのは烏野の皆だった。
「どこと戦う事になっても俺達の勝ちは揺らがない。だが、青城とは違った試合が出来る事は楽しみにしている」
「────揺らがないかどうかはやってみないと分からない」
私の背後から大地先輩の声が響く。
「その通り!今まで勝ち上がって来たことがないからって言って油断していると足元掬われるからな。それに、こっちには女王と姫の御加護があるからな?なあAちゃん!」
「!は、はい!こっちにはお互いがいればお互いが最強な変人コンビもいますから!ね、翔陽くん、飛雄くん!?」
「!?お、おう!その通りだ!!」
「──負けません」
続く孝支先輩の言葉に慌てて頷くとそのまま変人コンビにも話を振る。突然振られてびっくりしたらしい翔陽くんが慌てて返すと、飛雄くんも静かに頷いた。
「変人コンビだけじゃなくて……烏野も個人個人が強いですから……揺るがしてみせます!」
やっと上げた顔を再度下げつつもハッキリと言うと、再度私の頭の上にぽん、と牛島さんの手が置かれた。
「───そうか。楽しみにしている」
そう言うと牛島さんは私の頭から手を離し、くるりと踵を返した。それに少しホッとしたように息を吐いて顔を上げると、白鳥沢の他のメンバーが思い切りフリーズしたまま私を見ていた。
更に背後を振り返ると、烏野のメンバーは牛島さんと私を交互に見ている。
非常に気まずい空気が流れていた。
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作者名:さくら | 作成日時:2020年11月4日 18時