どう思った? 4 ページ15
なるほど、香りが違うから黙りこくってそれを楽しんでいたという訳か……と納得しかけてはっとする。いやいや結局変態の所業では。一瞬確かに香りが違う事に納得しかけたけどそういう問題ではない。
「いやっ、待って待ってそういう問題じゃないよね!!!」
「なんで?そういう問題だよ。同じ香りだーって思ってたのに実際は違ったんだからある意味感動するでしょ。Aちゃんびっくりしなかった?」
「そ、それはまあ。確かに違うなとは思ったけど」
「でしょ?なんていうか、Aちゃんの香りだなーってしみじみ思った」
「いや普通に恥ずかしいからやめて……!」
本当にしみじみ言われて一瞬何処かへ行っていた顔の赤みがまた戻ってきた感覚を覚えた。恥ずかしい、本当しんどい、何度目かわからないけどなんでこんな事になってるの!?
と、慌て出す私に徹くんはくすくすと笑うと、そっと私の頬を撫でた。
「あーなんかもったいないな……真っ赤になってそうなAちゃん貴重なのに暗くて殆ど見えない」
「見なくていい!なんで見たいのもう!」
「そりゃ見たいでしょ、俺の事をちゃんと意識してるってわかるAちゃんは貴重だもん」
「……っ」
左腕は私を抱き寄せたまま、右手で私の頬をゆるゆると撫で続ける徹くんは思いの外優しい声音で告げる。それに思わず目を見張った。
もう既に、意識している事を隠せていないと思ってはいる。というよりも前の私とは違って、少しずつ素直に思った事を出そうと努力をしているから。
でも、全部を出す事はきっと出来ないと思う。
出してしまったら───
「……徹くんは酷いよね。本当私の気持ちはお構いなしなんだもんなー……」
「え?」
「なんでもない。もう眠たいし寝る。おやすみ」
徹くんが疑問の声を上げたが、それに答えるつもりはないのでそのままもうやけくそだとばかりに徹くんの胸元に顔を埋めて目を閉じた。徹くんがそのまま何も言わずに私の髪をゆるく撫でるのに、徐々に睡魔がやってきて意識が薄れていく。それと共に僅かに泣きそうな気持ちも一緒に覚えて眠りに落ちた。
───ほんと、酷いよね。
意識している事を素直に全部出してしまったら、きっと「寂しいから行かないで」って、言ってしまうと思う。
でも私は、何一つ終わっていない徹くんのバレーを追い続けるって決めたから。それを見たいと願うから。
だからちゃんとセーブして、うまくやらなくちゃって思ってるのに……ほんと、酷いなあ───
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作者名:さくら | 作成日時:2020年11月4日 18時