取るに足らない「プライド」 ページ2
「───………そこで俺のAちゃんと何やってくれてんの?」
「───!徹くん!」
牛島さんの視線を追う前に飛んできた不機嫌な声に反射的に後ろを振り返る。目に入ったのは声音同様の表情を浮かべた徹くんだ。
「徹くんあのね、私がちょっと……ここでうろうろしてたから心配して声をかけてくれてただけなんだ。私、ちょうど徹くんの所へ行こうと思ってて───」
「───忠告だ及川。もう道を間違えるな」
「えっ……?」
慌てて徹くんに声をかけるが、それは途中で牛島さんに遮られた。それに思わず私が驚いて声を上げると、徹くんは不機嫌を隠さないままに大きく溜息をついた。
「お前は道を間違った。もっと力を発揮できる場所があったのに取るに足らないプライドの為に、お前はそれを選ばなかった」
「……!」
「……それは青城じゃなく白鳥沢に入るべきだった、って事でOK?成功が約束されたチームなんてないだろ」
続く牛島さんの言葉に思わず息を飲む。前にも聞いた言葉だけど、あの時はまだ直接言っている姿を見た訳ではなかった。途端に空気が重くなり、ぴりぴりと緊迫感が増す。それにはらはらしながら二人を私は交互に見ていた。
「───少なくとも今ここでは、俺の居る場所が最強の場所だろうが?」
そして牛島さんがきっぱりと言い放つ。言葉がない。それはまさしくその通りで、牛島さんが白鳥沢にいる期間で白鳥沢に勝った高校が宮城県にはない。……ずっと白鳥沢が最強の座にいるのだ。牛島さんがいる白鳥沢が、最強の場所───
改めて突き付けられると重い事実。胸元で手をぎゅっと握っていると、徹くんが自嘲気味に笑ってみせた。
「ハッ!!!相変わらず、面白いくらいの自信だな!……「取るに足らないプライド」……確かにね。聞けよ牛島、俺は自分の選択が間違いだと思った事は一度もないし、俺のバレーは何一つ終わっていない」
「!」
徹くんの言葉に床へと落としていた視線を徹くんへと向ける。そして、思わずびくりと肩を震わせる。
視界に入った徹くんの表情は、鬼気迫るものだった。
「「取るに足らない」このプライド。絶対に覚えておけよ」
今までに見た事のない、徹くんの表情。息をするのも忘れてしまう程、目を見張って徹くんを見ていると徹くんは私の腕に手を伸ばし思い切り自分の方へと引っ張った。
「わ……!?」
突然引っ張られてバランスを崩しそうになりながらもなんとか堪える。徹くんの視線は牛島さんへ向けられたままだ。
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作者名:さくら | 作成日時:2020年11月4日 18時