代表決定戦・VS青葉城西 30 ページ30
そして、放たれたサーブ。
渾身の力で打たれたそれは、烏野側は誰も手を出せず───コートに大きな鈍い音を立てて叩きつけられた。
余りの威力と、手が出せなかった衝撃で烏野側が完全に静まり返るのと、青城が湧き上がるのは同時だった。
点数は、24対22。────青城のマッチポイントだ。
今、このタイミングであんなサーブ。
あれは、本当に自分の知るあの幼馴染なのかと毎度毎度サーブの度に疑っているような気がするけど、にわかには信じられないぐらい。
「────もう一本!」
こちら側を睨みつけ、容赦なく潰しにかかろうとするその姿はまさしく「大王」。
私はただ声もなく、目を見張って徹くんを凝視するしかなかった。
そしてそれに流石の烏野側にも緊迫した空気が流れるが、それを払うかのようにホイッスルの音が鳴り響いた。気が付けば武田先生がTOを審判へ求めていた。
それにハッと我に帰ると、こちらへ戻ってくる皆にドリンクとタオルを配り、配った側から回収しながら皆の会話を聞く。
「────まあ、アレだ」
「拾うしかないっスね」
「ウス!」
「切り替え切り替え!」
言いにくそうにする鵜飼コーチに対して、大地先輩がどこか吹っ切れたように笑みを浮かべてきっぱりと言い切った。それに夕先輩が気合十分に返事をし、皆も頷き返す。
…………凄い精神力だ。後1点でも取られたら終わってしまうこの状況で、笑える大地先輩も、頷く皆も。
姫烏だなんて呼んでもらっているけど、やっぱり私はまだまだだ。目の前の状況に心があっちこっちに振り回されていて、皆を信じているのに不安になる。皆がこれだけ真っ直ぐ自分のやる事を見据えているのに。
情けない、しっかりしなくちゃ。
そう思って視線を下げ胸元でぎゅっと手を握ると、気合の入った孝支先輩の声が飛んできた。
「触りゃあなんとかなる!!負けねえよ、俺達は。────だろ?Aちゃん!」
名前を呼ばれてハッとして視線を上げると、孝支先輩がこちらに笑みを向けていた。
孝支先輩だけじゃない、皆もだ。それに再度胸元で握った手に力を込めて頷く。
「───はい!勿論です!」
私の返答に孝支先輩は満面の笑みを返してくれた。それに釣られるように皆も笑みで私に返事を返すとコートへと戻っていく。そして再び鳴るホイッスル、TOが明ける。
『────俺達は置いていくつもりがない。だからAもついてくるしかねえ』
いつしか飛雄くんに貰った言葉がふと脳裏を過った。
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作者名:さくら | 作成日時:2020年8月31日 23時