【HQ】烏野の「姫烏」16 (完結) (ページ27)

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代表決定戦・VS青葉城西 27 ページ27

それからほんの数分。10対8で烏野がリードしたその瞬間、またホイッスルの音が響く。───狂犬さんが戻ってきた。予想以上に早い復活、もう既に落ち着いているように見えるその様子に僅かに緊張感を覚える。そして。

「───狂犬ちゃん」
「──！」
『！！』

誰の攻撃かと固唾を飲んで見守っていた烏野側全員が驚いて息を飲んだ。このタイミングも、狂犬さん……！
私達が息を飲むと同時に狂犬さんの表情にも緊迫感が現れたように見えた。

「……問答無用で無慈悲な信頼だな」

横で鵜飼コーチがぽつりと呟いた。問答無用で無慈悲な信頼───
徹くんへとそのまま視線を滑らせては、見えた表情に更に私の中の緊張感が増した。あれは、私が苦手だと感じている徹くんの空気感だ。「俺の言う事は絶対」と言わんばかりの。

そして、それに応えるかのように狂犬さんが強烈なスパイクを叩き込む。

それは大地先輩も受けきれずに、大地先輩の腕に当たった後大きくコート外へと跳ね、そしてそれと同時に青城側が大きく沸いた。───まさに完全復活。

「──よく打った」

そんな中、徹くんがなんでもない事のようにさらりと狂犬さんに静かに告げるのが聞こえた。その表情には、「問答無用で無慈悲な信頼」。

「…………うす」

そして、狂犬さんも小さく返事を返す。

「……………ピースが、揃った」

今まで青城と言うにはあまりにも異質だった狂犬さんが、青城というパズルのちゃんとしたピースとなって最後の穴を埋めたその瞬間……私はぽつりと呟いた。

────────

その後の青城はもういつもの青城。いつもの完成されたプレーそのもので、烏野のリードにも追いつかれ、抜かれ、それを烏野が追うというさっきまでとは立場が逆転した試合運びになり、現在16対16。翔陽くんがコートへと入り、緊張感を滲ませた表情の飛雄くんの横へと立った。

「……大王様ってやっぱスゲーな」

翔陽くんの言葉に、離れた場所からではあるが私も飛雄くんと同様に翔陽くんへと視線を向ける。

「……わかんのか」
「なんかスゲーのはわかる！……だがしかし！！」

と。翔陽くんが突然声量を上げた。それにその場にいた全員が翔陽くんへと視線を向けた。そして翔陽くんは自信たっぷりに自身の胸に拳をぶつけた。

「おれが居ればお前は最強だ！！！」

「────…………ふふ」

思わずくすりと笑みが漏れた。皆は呆気に取られて翔陽くんを凝視している。