代表決定戦・VS青葉城西 19 ページ19
「本当皆こんな緊張の中凄いね……私今にも倒れそうなんだけど」
「ほんと倒れそうな顔してる。大丈夫、行ってくるよ」
「うん!行ってらっしゃい!」
私が溜息混じりで呟くと忠くんは続けて笑ったまま、けれど力強く頷いてくれた。それに大きく頷いて返すと、鵜飼コーチも静かに頷き、コートへ向かう為に身を翻した忠くんの背中を力強く押した。そして翔陽くんと交代だ。
「山口10点獲れ!!」
「それ試合終わるけど」
「許す!!!」
交代様の翔陽くんの言葉に、思わず緩く笑ってしまう。表情こそ見えないけどきっと忠くんも笑ってるだろう。
「一発いったれ山口ィー!!」
「へ、へいじょっ、平常心だぞ!!」
「ナイッサー!」
「ナイサー」
「思いっきり行けよ」
「ハイ!」
『せーのっ、一本ナイッサーブ!!』
それぞれが声をかけ、WUゾーンの皆がバッチリポーズまで決めて声援を送る。
「忠くん!……任せた!」
続いて私も最後に一言声をかける。それに忠くんはまたにこりと笑ってくれた。
───そして、次の瞬間に忠くんの表情が変わる。体育館内はそれぞれの高校の応援で騒がしい筈なのに、その喧騒が見ている私までどこか遠くに聞こえるような集中。
そんな中ホイッスルの音が鮮明に鳴り響く。焦る事もなく、ゆっくりと忠くんはボールを上げ、ジャンプフローターサーブを放った。
弧を描いて無回転で飛んだボール。
「アウト!!!」
渡さんはアウトとジャッジして触らずにボールを見送る。位置的にこちらからはアウトなのかインなのかが見えない、際どい位置にボールは落ちて───
線審の旗が振り下ろされた。
『───ぅおおおっしゃアアアアア!!!』
一呼吸空いて烏野側が全員で叫ぶ。私も先生やコーチと一緒に思わずガッツポーズ。入った……!!!!
「───そんなに驚く事じゃないデショ」
と、ここで蛍くんの声が響く。それにきょとんとしてしまうと、龍之介先輩がすかさず声を上げる。
「!またお前はそうやっ───」
「この5ヶ月、サーブだけは誰よりも練習したんだから」
『…………!』
龍之介先輩の言葉に被せるように静かに蛍くんが言った。それに、忠くんを始め、皆が目を丸くする。
「…………ほんと、素直じゃないなあ…………」
思わず苦笑して蛍くんを見るが、これはきっと忠くんに取っては最大の賛辞だっただろう。あのなかなか人を褒めない蛍くんが、「誰よりもサーブ練をしていた」と認めているんだから。
代表決定戦・VS青葉城西 20→←代表決定戦・VS青葉城西 18
681人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら | 作成日時:2020年8月31日 23時