代表決定戦・VS青葉城西 18 ページ18
強烈なサーブ。目の前で決まったサービスエースに体育館が沸く。僅かに視線を横へと滑らせると、鵜飼コーチが険しい表情を浮かべていた。そして、その口元が僅かに動く。
「────…………思っていた」
「え……?」
「先生っ!」
「ハイ!!」
それは本当に僅かな呟きで聞き取る事は出来ず、私は疑問から声を漏らしたが、すぐに鵜飼コーチは武田先生に声を掛けた。続いて聞こえてくるホイッスルの音、烏野の2回目のTO。
それにハッとして私も慌ただしく立ち上がってはドリンクとタオルを手に取り、戻ってきたメンバーに配っていきながら視線を青城側へ向けた。
さっきノートを見返していて気付いた、徹くんはずっと狂犬さんにしつこい程にトスを上げていた。そしてあのサーブと、鵜飼コーチがTOを取った事でそれがどういう意味だったのかに気付く。
あれはわざとというか……そういう作戦だったんだろう。多分、狂犬さんを本調子にする為の。そして、鵜飼コーチはそれに誰よりも早く気付いた。
こちらの僅かに重い空気とは打って変わった青城の様子。と、こちらの視線に気付いたのか徹くんと目が合う。
徹くんは一瞬驚いて、目を丸くした私に対しふっと余裕の笑みを見せた。───でもそれはいつもの緩い笑みではない。
『さあ、烏達はどうする?』
そう聞かれているような気がして、一瞬気の抜けたような自分の表情を引き締める。どうするも何も。
『勿論、迎え撃つだけ!』
そんな気持ちを込めて、厳しい視線を返してはくるりと徹くんに背を向けた。青城の異質なパズルのピースが本調子になったとしても、烏野のやる事は結局変わらない。
TO明け、皆を見送り気分を落ち着かせるように小さく息を吐いた所で、ふっと鵜飼コーチが笑った。
「───うっせーな、わかってるよ」
「え?」
鵜飼コーチの言葉と視線に声を上げて、私もコーチが見た方へ視線を向ける。
「───!あ……!」
そして再度声を上げた。それは疑問からではなくて、何となくではあるけどきっと流れが変わるような、そんな気がしたから出た声だった。
────────
「Aちゃん……凄い顔になってるよ」
「だ、だって!!緊張するもん……!!」
「あはは、なんか俺の緊張どっかいったよ」
こちらへやってきた忠くんを緊張の面持ちで迎えると、忠くんは私の顔を見るなり、きょとんとした表情になった後楽しげに笑った。緊張はどっかへいったらしいのでそこはまあ、いいのかもしれないけど。
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作者名:さくら | 作成日時:2020年8月31日 23時