病院にて 5 ページ5
「そういえば連絡すら取らない事が3日以上続いた事って今までなかったもんね……でも、会えないのも声が聞けないのも、もう慣れていかなきゃいけないから………」
そこで言葉を止めると再度私は目を閉じた。徹くんの頭撫でる手が心地良くてどんどん睡魔の力が強くなる。
「───それは」
「だって………徹くんは、あの煌く世界で羽ばたく人だからね………だから………大丈夫にならないと…………」
「───！」
私の言葉に徹くんが目を見張る。けれどなんとかそこまで呟いたのを最後に、私の意識は限界を迎えてしまった。
────────
次に目が覚めたのは朝方だった。時計は朝の5時を指している。顔を横へ向けると、簡易ベッドで眠っている徹くんが目に入った。身体を起こしてみると、点滴のお陰もあってか大分熱は引いたようだった。まだ少ししんどいので下がりきってはいないようだったけど、眠る前よりは大分マシだ。
床頭台のお茶に手を伸ばしてお茶を飲んで一息つくと、ベッドからそっと降りる。腕には点滴がついたままなので、絡まないようにゆっくりと降りると、そのまま眠る徹くんを覗き込んだ。
徹くんはよく寝ているようだった。春高予選前なので今日だって部活の筈なのに申し訳ない、と思うとそっと手を伸ばし、徹くんの少し癖のある髪を撫でる。そう言えば、昔徹くんが体調を崩した時にこうしたっけ……と思い出しているとその手をぱしっと掴まれた。
「っ！？……び、びっくりした。起きてたの？」
「……いや、今目が覚めた……」
「お、起こしちゃった？ごめん」
「いや……いいよ」
徹くんは私の手をそのまま自分の頬へ当てる。私が簡易ベッドに腰掛けると、そのままぐっと抱き込まれ、私は徹くんに背後から抱き締められたまま横になる形になった。
「！？徹くん……！？」
「…………まだ熱い。熱下がってないね……」
「ね、寝る前よりマシだけど……！」
「んー、まあ……そうだね。寝る前よりはマシかな……」
「そ、そうだよ……！っていうか、あの、体勢……！」
ちょうど首元に顔を埋められる形になり、別の意味で体温が上がりそうだと慌てている私を他所に、徹くんはそのまま呟いた。
「Aちゃんはさ……俺の考えてる事なんてずっとお見通しなんだね」
「……え？」
「……あのねAちゃん。俺さ……卒業したら、海外に行こうと思ってる」
「───！」
静かに告げられた未来の事に、私は目を見張って息を飲んだ。そして、同時に納得もした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 556人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくら | 作成日時：2020年6月22日 22時
