【HQ】烏野の「姫烏」13(完結) (ページ37)

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春高一次予選・終幕 5(第13部完結) ページ37

「お前、今日なんなんだ。変だぞ。いつも変だが輪をかけて変だ」
「はっ！？何岩ちゃんいきなり！！」

帰り道、上機嫌で周りの女の子達に手を振っていると突然ディスられて肩を震わせた。岩ちゃんいっつも突然ディスるからなあ……！

「今日Aちゃんがいたのに周りに愛想振り撒いてただろ。いつもAちゃんがいる時はやんねーじゃねーか」
「！」

岩ちゃんの指摘に目を丸くする。確かに、Aちゃんがいる時は基本的には避けてた、誤解を招くのが嫌だったし。まあいない時はそれなりにはあしらわずに応じてると思うけど。

「…………お前、まさか本気で諦め────る訳はねえか。お前だもんな」
「当たり前でしょ、諦めたんじゃなくて、これは今一歩前進状態ってやつ。ちょっと心の余裕が出来たんだよね。だから周りに目が向くようになったというか」
「心の余裕……？Aちゃんの事に関してお前がか？珍しい事もあるもんだな」
「まあね」

岩ちゃんの言葉に目を細めて見せると、そんな訳はないかと岩ちゃん自身が言った事を一蹴した。そうだ、これは余裕だ。仮とはいえ、今は恋人同士。
この事実は俺には大きかった。他へ向くAちゃん絡みの気持ちが全然違う。

「余裕があるのはいい事だが……お前、それで変な誤解を招かないようにしろよ。Aちゃんを泣かせたらいくらお前でも俺は許さねえからな」
「わかってるよ。俺は例え岩ちゃん相手でもAちゃんを渡すつもりなんてさらっさらないんだから」

岩ちゃんの厳しい視線に同じように厳しい空気を纏って返事を返す。それに岩ちゃんは黙ったまま返事を視線で返してきた。

「─────後3週間、か。間に何かイベントを挟みたいところだけどなあ……」
「3週間？何の話だ」
「こっちの話ー。なんだかんだでウシワカちゃんとかにいい所取られてるからさ、俺も何かアピールポイントが欲し…………あ」

ついお試し期間の事を呟いてしまう、いけないいけない。Aちゃんとの約束だから岩ちゃんにも今は話せないし────こっちの話だと切った矢先、道に立っている掲示板のチラシが目に入る。これは───

「…………いいじゃん！これだ！」
「あ……？？」

チラシを指差し表情を明るくする俺に、何が何だか、という表情で岩ちゃんは間抜けな返事を返してきた。
うんうん、これだ。これしかない。

────恋人同士の王道イベントを挟んだらいいんだ。

困惑する岩ちゃんを他所に、俺は一人満足気に頷いたのだった。