【HQ】烏野の「姫烏」13(完結) (ページ36)

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春高一次予選・終幕 4 ページ36

「………………」

口々に皆が言うのに目を見張る。気を遣って貰ったんだと理解すると私はふっと笑みを返した。

「───はい。ありがとうございます」

それに皆も笑みを返してくれる。そして徹くんが私の頭をぐりぐりと撫でた。

「ん、よし！Aちゃんはやっぱ笑ってないとね？一旦学校戻るんでしょ、後で迎えに行くから」

───と、ここでまた女の子の叫び声が上がった。そうだった、ギャラリーがいたんだっけ……！と今更思い出す。さっきの重い空気と条善寺の乱入に完全に気を取られてしまって忘れていた。

「───！あ、い、いやその…………」

それについたじろいでしまい視線を泳がせた。が、徹くんはなんのそのでにっこりと笑う。

「今拒否権はないでしょ？じゃ、また後で。烏野もお疲れ」
「またなAちゃん、と烏野」

そう言うと徹くんは私に背を向け手をひらひらと振った。一くんもこちらに手を挙げると背を向ける。それにギャラリーが徐々に散っていき、徹くんは女の子達にも手を振っていた。

「あいつ一体何しに来たんだ……あいっかわらずキャーキャー言われてんな……」
「………………」
「どうしたスガ？変な顔して」
「いや…………なんかちょっといつもと違わない？今まで、俺達が見てる限り女の子にあんまり愛想振り撒いてなかったのに」

徹くんの様子を見ていた龍之介先輩がぼやくと、その様子を見ていた孝支先輩が考え込むような表情をしているのに旭先輩が首を傾げる。それに対する孝支先輩の返答に、忠くんが呟いた。

「言われてみれば……Aちゃんがいる時はキャーキャー言われてても割とスルーでしたよね」
「そ、そうだったっけ……？？」
「そうだった」

思い返してみるがイマイチ思い出せない。自分自身があまりギャラリーを気にしなくてもいい環境になっていたせいでそこまで意識が回ってなかったし……と首を傾げた私に蛍くんがぴしゃりと言い切る。……蛍くんが言うなら恐らくそうなんだろう、蛍くんは周りをよく見ているから。

「いつもあんな感じだと思ってたけどなあ……」

私がそう返事を返すと、なんとなく皆顔を見合わせて微妙な顔をしていて思わずきょとんとするが、ちょうどそのタイミングで潔子先輩と翔陽くんが帰ってきたのでこの話はそこで終わりになった。

最後に色々あったけど、一次予選は無事突破だ。代表決定戦が本当の勝負、頑張るぞ！絶対、全国へ。より一層サポート頑張らないと、と私は心の中で気合を入れたのだった。