病院にて 2 ページ2
「蛍くんは悪くな───」
「！Aちゃん！！」
蛍くんの言葉に慌てて身体を起こしたが、またくらりと視界と上体が揺れたのに徹くんが咄嗟に私を支えてくれた。点滴が入っているけどまだ熱が下がった訳ではなかったらしい。揺れる頭を軽く振ってから徹くんに捕まりつつ私は首を横に振った。
「……蛍くんは何も悪くないよ。これは、元はと言えば私の体力のなさが招いた事だから」
「けど、毎日ずっと遅くまでしてるグループ練みたいなのに付き合わせてたから」
「私は付き合いたくて付き合ってたんだよ。それに、調子が良くないって気付いたのは6日目の夜の練習の後からだし……そこまでなんともなかったんだから。ね？」
本当に蛍くんは何も悪くないのにと更に言い募ろうと思ったその時だ。病室のドアが開いて、お父さんとお母さんが入ってくる。
「お、気が付いたか。大丈夫かA」
「はいはーい、皆ちょっとごめんねー！バイタル測るからちょっとどいてくれる？どう？A気分は」
ホッとしたような父と、さらっとベッドサイドに座ると手際よく私の体温や血圧を測っていく母に私は小さく頷く。
「うん、まだ目が回る感じはあるし身体はだるいけど他は特には」
「そうか、ちょっと診察もするから。母さん、どう？」
「熱は下がってないねー……まだ9度3分。他は特に問題ないけど」
「単純に暑い中頑張ってたから疲れたんだろうな。今日はそのまま入院になるから、Aはゆっくりここで寝てなさい。明日の朝の状況でもう一日入院するかどうか決めるから」
「うん……」
恐らく大事をとっての入院なんだろう。皆に心配をかけて情けない……身体のしんどさも相まって沈んだ声音で頷いた。それを見たお母さんはぽんぽん、と私の頭を撫でてから蛍くんと忠くんを振り返る。
「えーっと、確か蛍くんと忠くん……だったよね？徹くんも。ごめんね、こんな時間までAについててくれてありがとう。2人は随分遅くなってるから、お父さんがこの後お家まで車で送るわね。徹くんは───」
「俺は帰りません」
「……って言うと思ったから付き添い用の簡易ベッド持ってきてる。それ使って」
2人を送ると言った後お母さんは徹くんへ問い掛けるが、間髪入れずに帰らないという返答を徹くんは返す。でもお母さんはわかっていたのか、簡易ベッドの準備をバッチリ済ませていた。
「！えっ、いえ大丈夫です……！」
「僕達ここからそう遠くないですから」
「疲れてる中ついててくれたお礼だから」
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作者名：さくら | 作成日時：2020年6月22日 22時
