【HQ】烏野の「姫烏」12(完結) (ページ33)

今日:10 hit、昨日:16 hit、合計:108,888 hit

東京合宿・day7 2 ページ33

「…………翔陽は、いつも新しいね」
「！」

変人速攻・改に完全に意識を奪われていたけど、小さく研磨くんが呟いたのにふっと我に帰る。視線を研磨くんへ移すと、黒尾さんは暫し考えてから呟く。

「……もしチビちゃんが音駒にいたら、お前ももう少しヤル気出すのかね」
「翔陽と一緒のチームはムリ」
「えっ」
「？なんで？」
「常に新しくなっていかなくちゃ、翔陽にはついて行けなくなる。おれがどんなに上手にサボっても、多分翔陽にはバレる。あの天才セッターでさえ一瞬立ち止まっただけで見抜かれた、そんなの疲れるじゃん」

ムリだと言い切った研磨くんに思わず目を丸くする。でも、確かに研磨くんの言う事はわかる。翔陽くんは常に新しい───絶対に立ち止まらない。だからこそ、私は翔陽くんなら大丈夫だと信じられるんだから。

「ふーん……じゃあチビちゃんが「敵として」練習相手に居てくれたら、お前もヤル気出すのにな？」
「？なんで？？」
「だってお前チビちゃんの試合見てる時、買ってきた新しいゲーム始める時みたいな顔してるよ？」
「！」

新しいゲームを始める時みたいな顔……そう言われてこの一週間の研磨くんの様子を思い出してみる。
研磨くんは合間合間、ずーっと烏野の試合を食い入るように見ていた。烏野、というより翔陽くんを。その表情は───

「………ふふ」
「！ちょっとAなんで笑ってるの。……別にしてないし、ていうかソレどんな顔」
「わくわく顔」
「なにソレ意味わかんないしてないし」
「ふふふ、わくわく顔……」
「A……してないってば……」

困惑したように笑う私を見る研磨くんに、私はついつい笑い続ける。だってどう考えてもわくわく顔してるもんね、研磨くん。
念を押しながらホイッスルの音にコートへ戻っていく研磨くんを見送りながら、まだまだ止まらない笑いを噛み殺すのに私は忙しくなった。

─────────

その後は夕先輩のトスからの旭先輩のバックアタックや、シンクロ攻撃を決めたりと、確実に練習してきた成果が見える試合運びを烏野はしていた。いい感じだなと思いながらちらちらと試合を見ていると、気が付けば19対18。木兎さんがサーブをミスってしまい19対19になった後、今度はまさかのスパイクミスでついに19対20、この合宿において初めて烏野が梟谷をリードした。

「おお……！初めてのリード……！」

梟谷からリードを奪うなんて凄い、と思っていると、黙り込んでいた木兎さんが唐突に言った。