まる、サンカク、死角。【花巻貴大】

5.ほとぼりが冷めた頃 ページ5

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花巻side



「マッキー！Aちゃんと別れたんならAちゃんのこと貰っていいよね！？」



俺の教室に息を巻いてやってきたかと思いきや
及川がそんな宣言をする。
いや、知らなかったわ。及川ってAに気があったんだ。



「俺が許すことでもないし…つか及川はAのタイプじゃないんじゃん？」

「うるさぁい！一応…マッキーは仲間だから言っておきたかっただけだよ！」



変なところが律儀。
俺と付き合ってる頃は、そんな素振りを全く見せなかったのは
俺やAに気を使っていたってことなんだな。
及川はちゃらけているけど、根は凄く真面目で周りの事をよく考えている男だ。


及川は、ばん、と俺の机の上に何かを置いた。
何かと思えば、俺のイニシャル入りのキーホルダーだった。



「それ、俺がAにあげたやつ」

「Aちゃんこんなのまだ大事に持ってるんだもん、俺悔しい！」

「だから俺に言われても…」



少し、胸がざわついた。
あいつはこんなのまだ持ち歩いたりするような奴だったのか。
意外と、可愛いところもあるんだな。
もっとクールだと思っていた。



「及川。それ、返してよ」



そこへ現れたのは張本人のAだった。
なんだか、久しぶりに姿を見たような気がした。



「ごめん、花巻。及川がバカで」

「Aちゃん！バカって言ったほうがバカなんだからねー！！」

「及川も私にバカって言ったじゃん」




そう言ってAは及川を引っ張って俺の教室を後にした。



“花巻”か。今更別に言い換えなくたっていいのに。
Aも変なところが律儀だ。



さっぱりあっさりしている。そんなところは凄くいい女だと思う。
少し時間を置けば、普通に友達として仲良くしてくれそうな。
あいつはそういう奴だ。

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