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信じたかっただけの愚か者。 ページ2

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夢主side



ーー私ね、まだちっちゃくてガキンチョだけど、それでも頑張りたかったんだ。


父さんが重い病気になって、薬が必要になった。
だから、父さんと兄ちゃんの反対を押し切って何処かで働こうと思ったんだ。
弾かれて、蹴られて、追い掛けられたけど、それでもやっと雇ってくれる場所を見つけた。

せめて、父さんと兄ちゃんには美味しい物を食べて欲しかった。

二人が幸せなら、私はそれで良いから。



けどね、どうしても我慢出来なかったんだ。




その日は、どんよりとした曇り空だった。

「いやぁ〜、サチちゃんは本当に働き者だなぁ!」

私を気に入ってくれた商人の男の人がいた。
頻繁に店に訪れては、よく懐に忍ばせた金平糖をくれた。
金平糖は物持ちが良くて、一粒食べるだけでも甘くて美味しくて幸せな気分になれる。
その日食べる物にも困る事がある私達にとっては、その金平糖はある種神の救済だった。

だからこそ、思い知る。

この世に、神も仏も居ないことを。


「サチちゃん、この店をやめて俺達と家族になろう」

『……えっ?』

「俺の家には君と同じくらいの歳の息子がいる、俺は今江戸を股に掛ける大商人だ。
将来の跡継ぎの為にも、どうか」

いつもより真剣な顔、真剣な声色。

『……私、父さんと兄さんが居る、から』

「あぁ、あの二人かい?あんな死に損ない共に固執しなくても、俺の家に嫁入りすれば貧乏な生活から抜け出せるよ」



────は?



その時一瞬、何を言われたのか分からなかった。

きっと治ると、良くなると信じていて。
今は悪い事になっているけど、もうすぐ良い事があるって


大丈夫、大丈夫だ。

父さんは元気になって、お爺ちゃんになるまで生きるんだ。

兄ちゃんも好い人を見つけて幸せになって、私も、



─────けれど、例えそうじゃないとしたら?



脳裏に浮かぶのは、いつもゲホゲホと痰と血が絡む咳をする父さんの姿。
良くなるどころか、時間が経つごとに身体が痩せ細っていく。
……もし、本当に、死んじゃったとしたら?



錯乱して、気付けばその手を振り払っていた。



いつも和やかに笑い掛けてくれたその顔は、今や苛立たしげに歪み切っていた。




「ッいつ死ぬかも分からないヨボヨボの爺なんて守る価値ないだろ!!」




頭の中で何かがキレる音がして、それで、




─────気付けば、その顔面に拳を叩き込んでいた。





【盲信なんか犬も喰わない】

何の未来も無い家族。→←設定



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作者名:もにゃ子 | 作成日時:2023年4月13日 17時

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