検索窓
今日:9 hit、昨日:6 hit、合計:38,230 hit

31. ページ31

目の覚めない日曜日

昼過ぎに届いた大きい2つのダンボール


ガムテープを剥がそうと伸ばす手が

酷く震える

息がまともに吸えない

視界が滲む



開けたくない

見たくない

触りたくない

あいつらとの記憶なんて

一生思い出したくなんか無い

今すぐ投げ捨てて、燃やして、この世から無くしてやりたい

俺の頭の中からも、あいつらの頭の中からも



でも

それじゃ、俺は変われない

前の俺に、楽しかった頃に

バレーボールが生き甲斐だったあの頃に


戻る事は出来ない



貴方「……嫌だ」



目に見える震えた自分の手を強く握り

顔にそっと近付ける


俺は変わりたい

今の自分なんて大嫌いだ

もっと笑いたい

もっと人と話したい

仲間が欲しい


ここから始めよう

ゆっくりでいい

地道に、慎重に、自分のペースで

"自分自身"の力で


俺を取り戻す



貴方「…はぁ〜……よし」



額につたる冷や汗

まだ止まらない震え


少し、強引過ぎるやり方なのかも知れない

でも時間が無い

一刻も早く、俺を取り戻したい


ガムテープを引っ張る度に少しずつ開いていくダンボール

異常な程の汗

勢いで開けたダンボールに敷き詰まる



貴方「…ヴッ!………ぉエ、っ!ゴホ…っ」



自分の醜い過去と思い出

押し寄せる吐き気と苦しさに

咳が止まらなくて息が吸えない

辛い


ぼやける視界に見えた、白い封筒

手袋を付けた手で封筒を手に取る

Aへ

と書かれた字


母さんからだ…


スっと落ち着いていく呼吸

開いた手紙

ズラリと並ぶ文字に、自分は愛されているのだと感じ

小さく笑みが零れる



Aへ


元気にしていますか?
この間くれた電話で久しぶりにAの声を聞いて、お母さんは泣きそうになりました。
きっとAの事だから、ご飯もちゃんと食べていないんでしょう?
少なくとも3食は食べなさい。
じゃないと体がもたないわよ!

お母さんはAに起きた事を知っています。
だから、ダンボールを見た時びっくりしたの。
あの頃のA…1人で宮城に行くと言ったAを思い出すだけで、お母さんは涙が出ます。

本当はこのダンボールも送るのをためらいました。
またAが辛い思いをするんじゃないかと思ってね。
だけどAが変わろうとしている事に、お母さんはとても嬉しい。

Aがまたやりたいって言うんだったらもう一度電話して下さい。
お母さんもお父さんも、全力で応援するし、支えます。

A、乗り越えるのよ


お母さんより

32.→←30.菅原孝支side



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (56 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
61人がお気に入り
設定タグ:HQ , 菅原孝支 , 赤葦京治
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:塩味 | 作成日時:2016年2月22日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。