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19. ページ19

震える荒れた手はとても哀れで

自分が抱える感情はとても汚くて

足に力が入らなくなり、静かにしゃがむ


しゃがんだ俺の視界が少し暗くなり

足音が止まる


菅原「俺はお前を利用して全国に行く、だからお前は俺を利用して全国行けよ。ついでに男性恐怖症なんて…治せばいいんじゃないの…?」

貴方「…は…ぁ?」


冗談にしか聞こえないそれは

大真面目な提案で、脅迫で



俺は縋りたくなる



震える汚い手が視界に入った菅原は


菅原「…お前に何があったのかなんて知らないし、俺は聞こうとも思わない。だから…まずは潔癖症治そう?」

貴方「…!」


眉を下げて困った様に

子供をあやす様な微笑みで


菅原「じゃないと鷲見の身体が心配だよ…それに、鷲見は汚くなんてない」


俺が言って欲しかった

ずっと待っていた言葉を言ってくれる


菅原「まずは俺だけでも触れるようになってみない?」


そう言って差し出された骨張った白い手は

純白の様で

自分が触ったら黒く、汚くなってしまうのではないか

そんな考えが頭をぐるぐると駆け巡る


貴方「…」

菅原「…?」


まだ?

そうでも言いたげな瞳に


貴方「あ……菅原が、汚く…なる、よ…?」


苦しく確認する

すると小さな笑い声が聞こえて


菅原「じゃあ…指1本だったら、大丈夫?」


目の前に差し出されたものが

手のひらから人さし指1本に変わる


決して無理強いはしないけれど

止めることもしない菅原のやり方に


貴方「……っ…」

菅原「おっ、偉い、ははっ」


頑張れるかも、なんて思ったり



よっこらせ、と立った菅原は時計をチラリと見ると

今2時間目だ

と、呟くと


菅原「俺先に行くから鷲見3時間目から来なよ、ね!」


バイバイと手を振って先に教室へ戻って行ってしまった





独りで放置される保健室

しゃがんだままさっき菅原に触れた人さし指を眺めて

ギュッ、と両手で握る




いつか、いつか


手を振ったあの手を


ゆっくり、きつく、握りしめてみたい





菅原、俺は別にお前の事が信頼もしないし

お前の1番になりたいなんて思わない

だから

お前のこと

恩人って思うことにするよ

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作者名:塩味 | 作成日時:2016年2月22日 19時

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