【HQ】優しさに触れる【短編集】

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こんなこと言ったら脈アリだよとか言われるけど、
お互いそんな素振り見せたことないし、
私たちの話はいつだって部活のことだけだ。

一度だけ好きな人いるんだってねって聞いたら
思いっきりはぐらかされて言うなよって釘刺された。

期待はしない。したら辛いから。引退するまで彼女作らないだろう岩泉に安心してる。

岩泉おい。外見ろ。

外？こんな夜だし、月が綺麗だとか言うんだろうか？
いや、月が綺麗だな、なんて言われたらそれだけで暫く幸せになれるけども。

カーテンを開けて外を覗く。月は雲に隠れてよく見えなかった。少しだけ期待したから残念だなぁ。

そう思って視線を下に落とした。思わず息を飲んだ。見慣れたジャージが見える。


『ちょっと出てくる！』

「はーい」

妹の返事を背に玄関へ走った。顔が熱い。
無我夢中で外に出た。


「お、来たな。」

『お、じゃないよ！びっくりした！来るなら来るって言ってよ！』

「待ってろって言っただろ。」

それじゃ伝わらないわ！なんて思うのも仕方ない。

「お前急いで出過ぎだろ。ほら。」

ジャージを肩にふわっと掛けられた。こういうとこ。
下心なしで優しくできちゃう岩泉。ずるい。

「汗かいてないからな。流石に俺らの仲だから気にしないよな。」

『そりゃーね！私たちなんたって友達だし！』

自分で言いながらちょっと切なくなる。

「で、今日の試合どうだったんだ？」

『んー、ダメだった！』

「遠慮すんなよ。どうせ試合終わった後泣いてないんだろ。」

なんでそんなこと言っちゃうかなぁ。
底抜けに優しいからいつまでも吹っ切れない。
好きでいるの辞めたいのに引き戻される。

『そうだなぁ。最後12秒前まで勝ってたの。１点差。キープしてたら勝てたはずなんだ。なのに私が出したパスがカットされて速攻に持ち込まれてさ。私がずっとキープしてたら良かったのに。周りの顔も見れなかった。皆んなに申し訳なくて。私じゃなければって何度も思って。ずっとあのシーンが頭から離れない。』

「そうか。俺もそういう経験何度もあるぞ。エースなのにここぞという時に決められないで負けたりな。でも今回そんなに後悔したなら、同じ過ちはもうしないだろ。逆にこれが最後の試合じゃなくて良かったと思うぞ。後、チームメイトには素直に謝れよ。そしたら大丈夫だ。お前の頑張りは俺すらわかってるんだからな。チームメイトは尚更知ってるだろ。大丈夫。もっとお前も俺も上手くなれるさ。」

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