05 隠れサドが一番ヤバい ページ7
「たっだいま〜」
ご機嫌なおそ松の声。
コンビニで買ったビールをたくさん抱えて居間に帰ってきたおそ松に、私は思わず歓喜の声を上げる。
「お、おそ、おそ松!!」
「ぶっ」
麻縄をべしっと男の顔面に叩きつけ、もつれる足で救世主に駆け寄る。
おそ松は不思議そうに私を見て、居間の男二人に目を移した。
「なんだお前ら。帰ってきてたの」
「し、知り合い…?」
「俺の弟だよ。そっくりだろ〜!俺六つ子の長男なんだぜ!」
「ムツゴ!?!?」
おそ松のけろりとした物言いに声が裏返る。
六つ子という聞き慣れない言葉に、思わず目玉が飛び出るかと思った。というかちょっと飛び出た。
次から次に起こる出来事に追い付けなくて目を白黒させていると、変態は嬉しそうに自分の顔を撫でながら恍惚とした笑みを私に向ける。
「あ〜、アンタ最高……今度はこっちの鞭で打ってみてよ」
「ごめん私帰る!!」
そのまま廊下に飛び出そうと体を反転させると、がしりと腕を掴まれる。
振り返れば、変態から私を助けてくれなかった青いヤツ。
「まあ待てカラ松ガール!一松が初対面の人間にこんなに打ち解けるなんて、初めてのことなんだ!」
「打ち解けるどころかお宅の一松さん脳みそドロドロに溶けてますけど!?」
「何それ言葉攻め?録音するからもう一回言ってくれない?」
「おい長男!」
ひしひしと感じる身の危険に、慌てておそ松にすがりつく。
腐っても長男。
どうにか逃してくれるだろうと考えていた私が甘かった。
「……Aさあ。俺が寒い中ビール買って来たってのに、自分はさっさと帰るわけ?」
そう言ってニコッとするおそ松の目は、塵微たりとも笑っていない。
「ほら、な? 兄貴もこう言ってることだし、ゆっくりしてってくれ」
「いっ……」
カラ松と呼ばれたグラサンは、私の腕を掴む手にぎゅうと力を込めた。
みしりと骨が軋む感触に、思わず顔をしかめる。
「わ、悪い!い、痛かったか……?」
「……だ、大丈夫、です」
私の表情に気付き、大げさに眉を下げた彼は、腕を掴む手をパッと離してくれた。
この人は少しまともなんだと安心していると、サングラス越しにじっと私の顔を見つめてくる。
「……えっと?」
「えっ、いや、その!」
首を傾げると、かあっと頬を赤く染めて目を逸らす。
「……痛がってる顔、可愛いなって……」
その言葉を聞くなり、私は今度こそ全力で家の外に飛び出した。
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スカイ(プロフ) - 本当に好き....!!!めちゃめちゃ面白いです!作者様がまた書きたいと思いましたら、更新して頂けるととても嬉しいです!待っています! (2020年6月2日 18時) (レス) id: a0f03080e5 (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもちもんだみん(プロフ) - おもしろい〜! (2019年2月14日 14時) (レス) id: bcc917b3e1 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - ナバポさん» コメント有難うございます!こじらせクズがとても好きなんです〜!楽しんでもらえてとても嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - 俺の嫁は二次元(キリッさん» コメント有難う御座います^^年に二度ほどしかない更新ですが楽しんでもらえたら嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ナバポ(プロフ) - 二人がクズをこじらせている笑面白かったです! (2017年6月14日 20時) (レス) id: 03f7a55e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨモ | 作成日時:2015年12月15日 21時