04 クッキーの呪い ページ6
.
「おい、これアンタが縛ったのかって聞いてんだけど」
「……」
「フフン、俺に見惚れて口も利けないか?全く困った子猫ちゃんだ」
「………」
どうしよう。過去最高に消え去りたい。
おそ松にそっくりな二人の男に詰め寄られながら、私は目を合わせないようただただ遠くを見詰めていた。
話の内容やパーカーの色から、どうやらこの二人はおそ松では無いらしい。
見知らぬ男二人に下品な遊びを見られたかと思うと、今すぐ逃げ出して海に身投げしたくなる。
というか、もういっそのこと殺して下さい。
私が縛ったクッキーを手のひらに乗せ、じろじろと見詰めてくる二人の男に顔から火が出る思いでぎゅっと目をつぶる。
「……これすっげー器用に縛ってあるけど。得意なの?こういうの」
ニヤリと笑いながら顔を覗き込んでくる男の目が、心なしか熱を帯びているように見えるのは気のせいだろうか。
「……」
何も言わずにじっと正座して畳を見詰める。
二人は困ったように顔を見合わせた。
「一松、お前が怖いんじゃないか?もっとスマイルだ、スマァイル。欲望が顔ににじみ出てるぞ」
「てめえはクソさがにじみ出てんなクソ松」
何も見ざる、何も聞かざる、何も言わざる。
おそ松が帰って来たら即帰ろう。
そう心の中で自分を励ましながら硬く目を閉じていると、ひたりと硬いものが頬に当てられた。
「……ねえ、さっきみたいにコレで俺のこと縛ってよ」
荒い吐息が混じったその声に、思わず目を開けてばっと二人から距離を取る。
紫の男が、そんな私を心底楽しそうに見詰めながら両手で麻縄を握りしめていた。
(そ、そっち系のひと……!)
脳が必死に逃げろと警告しているのと反対に、すくんだ体が思うように動いてくれない。
助けを求めるように青い彼に目をやる。
彼はそんな私を見ると、サングラスの下で楽し気に目を細めた。
「ダメだぞ一松、言ってるだろう……スマァイル、だ」
「あー……スマイルスマイル……ひひ」
不気味な笑顔でどんどん近付いてくる変態を、必死の抵抗で眉間にしわを寄せ睨み付ける。
すると、彼は一瞬きょとんとして足を止めた。
き、効いた…!?
私の喜びも虚しく、再び目を細めて口元を歪める男。
「いいね、その顔……俺のこと心底蔑んでるって感じで、たまんない」
神さま仏さまおそ松さま。
頼むから、早く帰って来て。
私に麻縄を握らせる男の足元で、無残にクッキーが割れていた。
05 隠れサドが一番ヤバい→←03 燃えないゴミの心は燃える
1562人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スカイ(プロフ) - 本当に好き....!!!めちゃめちゃ面白いです!作者様がまた書きたいと思いましたら、更新して頂けるととても嬉しいです!待っています! (2020年6月2日 18時) (レス) id: a0f03080e5 (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもちもんだみん(プロフ) - おもしろい〜! (2019年2月14日 14時) (レス) id: bcc917b3e1 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - ナバポさん» コメント有難うございます!こじらせクズがとても好きなんです〜!楽しんでもらえてとても嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - 俺の嫁は二次元(キリッさん» コメント有難う御座います^^年に二度ほどしかない更新ですが楽しんでもらえたら嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ナバポ(プロフ) - 二人がクズをこじらせている笑面白かったです! (2017年6月14日 20時) (レス) id: 03f7a55e36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヨモ | 作成日時:2015年12月15日 21時