26 自然発火性グラサン ページ28
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そよ、と春の香りを乗せた風が、橋のらん干に寄りかかる俺の前髪を柔らかく揺らしていく。
離れたところで熱い視線を送ってくるガールズにウインクを一つ寄越してから、俺は小さくため息を吐いた。
「……一体どうしちまったんだ、俺は」
ぽつりとそう呟いて、ずるずると川を背にしゃがみ込む。
瞼を閉じれば、顔を真っ赤にさせて照れていたAの姿。
作った料理を嬉しそうに食べてくれたこととか、やっぱり少し強気なとことか、俺達にドン引きする姿とか。
(何かもう、全部が！全部が愛しいんだ…！)
知らない感情にぶわわっと奥底から体が熱くなってくる。
始めはAの泣き顔が見れるだけで良いと思ってたのに、彼女のいろんな表情を知るたび、俺はどんどん深みに溺れてしまっていた。
もっと知りたい、触れたい、触れられたい。
どろどろに泣くまでいじめてやりたいし、その後でぐずぐずにとろけるまで甘やかしたい。
(もしこの腕の中に抱きとめたら、アイツはどんな顔をするんだろうか…)
ぼんやり腕の中でとろけた表情を浮かべるAを想像して、慌ててぶんぶんと首を横に振る。
下半身に回りそうな熱を冷ますように立ち上がると、サングラスを掛け直して早足で帰路を急いだ。
よく行くパチンコ店の手前で曲がり、近道に一松行きつけの路地裏に入る。
たむろする猫達に挨拶を交わしていると、狭い分かれ道から何やらぼそぼそと話し声。
怪訝に思い目を向けると、明るい髪色のボーイズが楽しそうに笑っている。
仲良きことは美しきかな。
その姿を見て何の問題も無いことを確認し、家に帰ろうと足を踏み出した、刹那。
「＿＿い、いやです！無理！やだってば！」
つい先ほどまで俺の心をひどくかき乱していたその人の、焦りに満ちた悲痛な声色。
その声が鼓膜を震わせた瞬間、俺はばっと再び男たちに目を向けた。
男たちに顔を掴まれ、俺が見たこともない涙を浮かべた彼女が、果たしてそこに居た。
ふつり、腹が煮える感覚。
彼女を泣かせていいのも、乱暴に顔を掴み上げていいのも、俺だけだという独占欲。
「A！大丈夫か！？」
衝動のまま男たちをダウンさせて、ほっとしたように頬を緩める彼女の肩を掴む。
「……ちょっと、ホントに死ぬかと思いました」
眉を下げて笑う彼女。
潤んだ瞳に、ヒドイ顔をした俺が映っている。
…ああ、なるほど。これは恋なのか。
心のわだかまりが、柔らかく溶けるのを感じた。
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スカイ(プロフ) - 本当に好き....!!!めちゃめちゃ面白いです！作者様がまた書きたいと思いましたら、更新して頂けるととても嬉しいです！待っています！ (2020年6月2日 18時) (
レス) id: a0f03080e5 (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもちもんだみん(プロフ) - おもしろい〜！ (2019年2月14日 14時) (レス) id: bcc917b3e1 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - ナバポさん» コメント有難うございます！こじらせクズがとても好きなんです〜！楽しんでもらえてとても嬉しいです！ (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - 俺の嫁は二次元(ｷﾘｯさん» コメント有難う御座います＾＾年に二度ほどしかない更新ですが楽しんでもらえたら嬉しいです！ (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ナバポ(プロフ) - 二人がクズをこじらせている笑面白かったです！ (2017年6月14日 20時) (レス) id: 03f7a55e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモ | 作成日時：2015年12月15日 21時
