10 どっかの長男に激似 ページ12
「出てけクソ変態共!!!」
母親の誤解を必死に解く姿を一松とボケーッと見ていると、ふいにギロリと睨んで蹴り飛ばすように俺たちを家から追い出すA。
凄い剣幕で怒鳴り声をあげる彼女は、どうやら完全におかんむりというヤツらしい。
やっぱり体に触れたのが悪かったか。
紳士な俺としたことが早まってしまった。
「…あ”〜、やっぱイイなァ。うん、すげえイイ。最高だよアンタ」
しゅんとして反省する俺のとなり、一松は目を血走らせながら、先ほどまでの様子と全く違うAにハァハァ息を荒げている。
フッ、一松…。流石の俺でも、ちょっと引くぜ。
「やっぱ俺の目に狂いはなかったんだ…。フヒ、おいA、もっと言えよ…俺がクソで変態で、どうしようもないゴミだって…」
どこから取り出したのか、いつかの麻縄を握り締めて上気する一松に、嫌そうな表情を浮かべるA。
それから諦めたように溜め息を吐くと、寝起きでぼさぼさの頭をがしがしと掻いた。
「…もう良いですけど、今度ウチに一歩でも入ってきたら警察呼びますから」
聞いたこともない低いトーン。
一松から麻縄を取り上げると、べしっと力いっぱい地面に叩きつけて俺たちに背を向ける。
その姿を食い入るように見つめていた我が弟が、となりで感嘆の息をもらした。
「ハァ、すげえよかった…お前もそう思うだろ?」
「ああ。あの勝ち気な態度、今すぐぐちゃぐちゃにしてやりたいな…」
そしてその後にドロドロに甘やかして、俺だけを見るように仕向けてやるのだ。
そうしたら、どれだけ気持ちの良いことだろう。
「クソ松のくせに良い趣味持ってんじゃねえか」
「フッ……飴とムチは使いようってな」
ニヤリと顔を見合わせて笑っていると、ガチャリと音を立てる玄関。
帰ったはずのAが、ドアの隙間からそろりと顔を覗かせた。
靴のかかとを踏んで家から出ると、そのまま無言でズンズン俺たちに向かってくる。
殴られる!と思い身を固めた刹那、がっしりとわし掴みにされる尻。
「えっ、あ、A!?」
こんな路上で、大胆過ぎる!
突然の行動に慌てれば、ポケットから何かを抜き取られる感覚がした。
「……?」
何だろうと疑問に思ってAを見る。
その手にはしっかりと俺の財布が握られていた。
「うふふ、倍にして返しますから」
そのまま一松の財布も抜き取ると、「パチンコ勝つぞ〜!」と再び家に入っていった。
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スカイ(プロフ) - 本当に好き....!!!めちゃめちゃ面白いです!作者様がまた書きたいと思いましたら、更新して頂けるととても嬉しいです!待っています! (2020年6月2日 18時) (レス) id: a0f03080e5 (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもちもんだみん(プロフ) - おもしろい〜! (2019年2月14日 14時) (レス) id: bcc917b3e1 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - ナバポさん» コメント有難うございます!こじらせクズがとても好きなんです〜!楽しんでもらえてとても嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - 俺の嫁は二次元(キリッさん» コメント有難う御座います^^年に二度ほどしかない更新ですが楽しんでもらえたら嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ナバポ(プロフ) - 二人がクズをこじらせている笑面白かったです! (2017年6月14日 20時) (レス) id: 03f7a55e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨモ | 作成日時:2015年12月15日 21時