八重島さんの夏休み【白鳥沢】 (ページ10)

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五十重島さんページ10

「八重島さんはここにもいるんですね」

「……………迷子なんです」

知らない街で迷子がふたり。

やばい。

夜になる前に帰さないと、牛島くん高校生だから私が捕まる......！！

「牛島くんはどっちから来たの？」

「多分あっちですね」

指をさしたのは私とは全然違う方向。

「お腹空いちゃったね」「そうですね」なんて会話をしながら、牛島くんが来たであろう方向に歩いていく。

、

さらに道に迷った。

３０分も歩いていたら体力が限界に近づいていた。
ちなみに牛島くんはこの昼間にランニングをしてたのに元気そうで、まさしく体力おばけ。

さすがにキツイので公園で日陰になっているベンチに座る。

「あの、」

「ん？」

「天童がいつもすみません」

「いやいや！あの時、天童くんが話しかけてくれたから、今、私は色んな人に声をかけてもらえるので。
天童くんってなんだかんだでいい子ですよね」

天童くんをフォローしたつもりが保護者懇談会みたいになってしまった。

しかも全然喋ってないのに牛島くんと会話が全く盛り上がらなくて、詰みかけている。

「体力は大丈夫ですか」

「もう大丈夫。そろそろ行きましょうか」

来た道とは逆の方向にただひたすら歩いていく。

しばらくすると大学に通う時の交差点にでた。

ここから家までは歩いて４０分くらいだから、学校までは３０分もかからないはず。

それなのに牛島くんはそわそわしていて、理由を聞いたら門限まであと２０分とのこと。

申し訳ないが走る体力はない。

「すみません」

「え、ちょ、待っ」

私の右手首を掴んだ牛島くんが走り出す。

はっや！！

待って、腕もげるよこれ。

いや速い速い速い速い速い。

曲がるたびに遠心力で気を失いかける。

言いたいことは頭の中にいっぱいあるのに、向かい風で吹っ飛ばされていく。

ユースって化け物！！

、

「あれ若利クン遅かったね～」

「あぁ」

「あれ、なんで八重島さんいるの？
てか、めちゃめちゃ疲れてるじゃん」

「、、や、もう、むり、」

＂牛島くんとはもう絶対迷子にならない＂

そう心に誓った夏だった。