八重島さんの夏休み【白鳥沢】 (ページ8)

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四十八重島さんページ8

５連休の初日

なぜか私は及川くんとショッピングモールにきている。

「んー Aさんはどっちがいい？！」

「え、どっちでもいい」

「じゃあこっち着てみて！」

昨日の夜『金曜日デートしない？』なんてlineが入ってたので
『来ていく服がないから無理』と即答したら

今朝、まさかの家にやって来て一言。

『明後日の服買いに行こ！』

………ねぇ、住所誰から聞いたの。

.

家から着てきた服を脱ぎ、さっき押し付けられたワンピースに着替える。

アッ。ファスナー後ろ系のやつだこれ。

手が、手が……！！

「Aさん終わった？」

「ごめん、もう少し」

筋肉痛の腕でどうにかしてファスナーを引き上げ、カーテンを開けた。

あー、腕やばい。

「えと……どうですか、ね？」

「うん、似合ってる」

「及川くんが言うなら説得力あるね」

「でしょでしょ！！」

及川くんカッコいい部類の人だし、

服のセンスあるし、
……まぁ、あの半ズボンはいただけないけど

電車の中でも女の子に声かけられてたし

やっぱモテ男は違うんだなぁと実感させられる。

「………暗殺されたらどうしよう」

「え、Aさんどしたの？」

「や、なんでも。あ、服買ってくるね」

服の値段に顔がこわばりそうになったけど、セール中だったので思ったより安くてちょっと安心。

「Aさん、次はくつ！」

「えっ、わ」

ぐいっと手首を掴まれ思わずバランスを崩しそうになる。

歩幅も少し大きい彼には追いつくだけで精一杯。

正直、筋肉痛には結構ツラい。

「ちょ及川くん、腕」

「だって絶対逃げるじゃん！」

「いや逃げんわ！！」

逃げないように手をつなぐって、幼稚園児か！

私の横でんーと悩んでいた及川くんが、あっ！と何かを思いついたようで。

「じゃあ、これは？」

掴んでいた手がそっと離され、右手に及川くんのごつごつとした左手が絡められた。

「や、これ恋人繋ぎ」

「えーだめ？」

少しだけ眉尻を下げつつ、手はぎゅ。と強く握られる。

あざとい、あざとすぎる。

でも私はこの表情に今日も勝てない。

「お好きにどーぞ」

「やった、Aさん大好き！！」

「私は嫌い」

「ちょ、ひどくない？！」

「ほら、靴買いにいこ」

不覚にも大好きなんて言われて赤くなってしまった私がいる。

照れたことを気づかれないよう、少しだけ強めに手を引っ張った。