八重島さんの夏休み【白鳥沢】 (ページ5)

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四十五重島さんページ5

昨日とはうって変わって、過ごしやすい今日。

明け方にパラっと雨が降ったようで、それも涼しい理由の1つなんだろう。

朝ごはんという戦争が終わり、下げられた食器をひたすら洗う。

鍋の汚れとたたかっていると、すいませーん！と声がした。

「はーい」

食堂にやってきたのは、ショートヘアの可愛い女の子。

忘れ物かな。

「馬術部なんですけど」

「はい」

「馬に餌あげたくて」

え。なにここ、馬もいるの？

陸上やバレーは分かるとして、馬術もあるなんてさすが白鳥沢。

「あっ、りんごとかニンジンとかありますか？」

「りんご、ニンジン、りんご、ニンジン……」

そういや豚汁でニンジン切ったっけ。

私は厨房の奥にむかって思いっきり叫んだ。

「大島さーん！」

大島さんは食堂歴28年のベテラン。

なにかあったら大島さんに聞け。というのが合言葉だったりする。

私が叫ぶと奥からひょこっと顔をのぞかせた。

「ん、どしたー？」

「馬術の子がきたんですけど」

「あぁ、ニンジンそこにあるよ」

指された先にはザルに大量のニンジンが盛られていた。

どうやら馬術部が餌をもらいにくるのは日常茶飯事らしい。

.

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

「白鳥沢って馬術あるんだね」

「そうなんですよ～！もう可愛くて可愛くて」

女の子の目はキラキラしている。

なんか青春だなぁ。

「いいなぁ乗ってみたい」

「あ、乗ります？！全然いいですよ！！」

この子、めちゃくちゃフットワークが軽い。

将来出世しそう。

「んー、乗りたいんだけどね、昼まで仕事あるから」

「そうなんですね…… あ、でも毎日いるんで気が向いたら是非来てください！」

「うん、行けたら行くね」

「はい、待ってます！！
　あ、いつもありがとうございます！ご飯美味しいです！」

ペコッと頭をさげ、女の子は風のごとく走っていった。

さて、今日も１日頑張りますか。