四半純血のプリンス (ページ29)

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母の死後、父とは離れて暮らしていた。
だから母の眠る墓に２人で来たことは一度もない
冷たい風が頬を掠めて身震いする
この街はまだ昼間だというのに、ホグワーツ周辺とは程遠いほど暗く、沈んでいる

「…冷えるな。一度家で休むか」

９歳の誕生日を迎えた頃から再びここで父と暮らすようにはなった
まだどこか他人の家のようにも感じられるリビングに腰を下ろす
９年前の今日、母はここで息絶えた

「また本が増えてない？」

私の言葉を完全に無視して、一人掛けのソファーで日刊予言者新聞を広げ始める彼にため息をついて、埃臭いキッチンへと向かう
母が生きていた頃は、夕飯を作る母の背中にくっついて回っていた
それが今は私がキッチンに立つようになってしまった

「紅茶淹れましたよ。今日中にホグワーツに戻るんじゃなかったの？」

「あそこにいると疲れて仕方がない…たまには休ませてくれ」

「分かった。部屋にいるから帰る時に呼んで」

スコージファイで屋敷を清めつつ、自室に入る
清めても埃臭さが残るこの屋敷。
母の生前はもう少しきれいだったはずだ

「あ、さっきの編みぐるみ」

ローブのポケットからコウモリとオオカミを取り出す
ベッドの上に転がったそれを軽く抱き締める
父親代わりだった彼以外からプレゼントを貰うのなんて初めてだ
どうしてオオカミが彼を表すのかは分からないけど、なんとなく腑に落ちた

「戻ったらちゃんとお礼言わなきゃな…」