白い娘 ページ1
その屋敷は、巨大だった。
それでも威圧的に感じなかったのは、きっと周りのご近所さんが――――普通の人達が――――楽しそうに暮らしているからだろう。
そう思いながら、Aは麦わら帽子からその巨大な城を見上げた。
1971年7月の事である。
ビク、とAは母と共に肩を跳ね上げた。共に来てくれた母が戸を叩き、その戸が開いた後だった。
Aの目に入るのは、1人――――否、1匹のヘンテコリンな、少なくともAが今までいきてきた中で1度も見たことがない生物。
体は毛に覆われていなく、皮膚がむき出し。その皮膚も皺が寄って、カラカラしている。背は低く、Aよりも少し小さい程度。ヒトと同じで服を着ている。
なによりも特徴的だったのはその耳と目。耳はチワワの様な形をしておるが、そこにも毛はない。そして大きい。
目も大きかった。まるでテニスボールくらいの硝子玉。母の背に隠れながら盗み見てAも、母も思った。
この白壁の屋敷に訪れたこの2人。玄関を開けた奇妙な生き物――――屋敷しもべ妖精――――には初めて会ったのである。
白壁の屋敷の中は温かみのある内装だった。外壁と同じで内壁も白1色だが、所々に写真や絵が額に入れられ飾られている。――――絵や写真、全てが動き、チラチラと気になる様に見る母と娘を楽しげに見ていた。
他にも、タペストリーやらなんやらが壁に飾ってあり、白1色の家にしては賑わいを見せていた。
赤と白のタータンチェック柄の布が敷かれた、やはり白を基調とした暖炉の前に老婆が1人、木でできた椅子に座っていた。A達を待っていた。
「よく、来てくださいました」
老婆は先程の奇妙な生き物がAと母を案内すると、歓迎した。そして付け足す。
「よく逃げないでくださりました」
少しお茶目な顔をしたので、なんとなく気難しい人ではないのだと思う。
「言っておいたんですよ、脅かす様な真似はしないように、と」
「では、アレは――――」
「ええ勿論」
実在していますよ、幻覚なんかじゃありません。Aは老婆がそう言うと、老婆は懐から棒を取り出しヒョイと降るのを見た。
「屋敷しもべ妖精――――先程のアレ―――に持ってこさせても良いんですけどね」
生憎、茶くらいは自分で出せる。にっこり老婆が笑うのと同時にいくつかのカップと人角ティーポットがやって来た。ひとりでに。宙に浮いて。
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作者名：ホワイト家初代当主 | 作成日時：2021年1月8日 20時
