検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:44,099 hit

9話 ページ9

その日から、Aは日に日に衰弱していった。

一週間後には、食事が喉を通らなくなった。

二週間後には、体重が15キロ落ちていた。

三週間後には、外出が困難になった。

そして一か月がたった6月21日、Aはヨコハマのとある崖にいた。

歩行すら困難となってしまった体を引きずって、崖っぷちに立っていた。

◇ ◇ ◇


「すみません、警察の者ですが」


不意に、背後から声をかけられた。

現役時代の筋肉など見る影もなくなった体には力が思うように入らず、緩慢な動きで振り向く。

そこには、あの日見た、理鶯の運命の番がいた。


「……ぁ」


ほとんど息のような声が漏れたが、彼にはどうやら聞こえていないようだった。


「ヨコハマ署の入間銃兎と申します。……あなたはここでなにを?」


俺の目は、提示された警察手帳ではなく、彼の顔に引きつけられていた。


「……知っている」

「……は?」


嘘だ。

俺は入間銃兎と名乗った目の前の男を見たことはあったが、名前など知らなかった。


「知っている、とは?」

「入間、銃兎。俺はお前を知っている」

「……まあ、良いでしょう。あなたはここで、なにをしようとしていたのですか?」


警察官である彼にこんな目的を話してもいいのか一瞬迷って、結局俺はその答えを発した。

10話→←8話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (209 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
445人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

狼鬼(プロフ) - 何回も読み返すほど悲しくて、でもとても素敵な作品です。完結するまでずっと待っています。無理をしませぬようお気をつけください。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: 8a6b913a72 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - mikittyさん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!! (2021年1月26日 16時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結まで追い続けます! (2021年1月25日 12時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - マームさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!なかなか更新できていませんが、頑張らせていただきます!! (2020年6月28日 10時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
マーム - めっちゃ好みすぎて何回も読み返しています!!更新頑張ってください!! (2020年6月24日 23時) (レス) id: 12bdf0a400 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:龍牙 | 作成日時:2019年5月11日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。