9話 ページ9
その日から、Aは日に日に衰弱していった。
一週間後には、食事が喉を通らなくなった。
二週間後には、体重が15キロ落ちていた。
三週間後には、外出が困難になった。
そして一か月がたった6月21日、Aはヨコハマのとある崖にいた。
歩行すら困難となってしまった体を引きずって、崖っぷちに立っていた。
◇ ◇ ◇
「すみません、警察の者ですが」
不意に、背後から声をかけられた。
現役時代の筋肉など見る影もなくなった体には力が思うように入らず、緩慢な動きで振り向く。
そこには、あの日見た、理鶯の運命の番がいた。
「……ぁ」
ほとんど息のような声が漏れたが、彼にはどうやら聞こえていないようだった。
「ヨコハマ署の入間銃兎と申します。……あなたはここでなにを?」
俺の目は、提示された警察手帳ではなく、彼の顔に引きつけられていた。
「……知っている」
「……は?」
嘘だ。
俺は入間銃兎と名乗った目の前の男を見たことはあったが、名前など知らなかった。
「知っている、とは?」
「入間、銃兎。俺はお前を知っている」
「……まあ、良いでしょう。あなたはここで、なにをしようとしていたのですか?」
警察官である彼にこんな目的を話してもいいのか一瞬迷って、結局俺はその答えを発した。
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狼鬼(プロフ) - 何回も読み返すほど悲しくて、でもとても素敵な作品です。完結するまでずっと待っています。無理をしませぬようお気をつけください。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: 8a6b913a72 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - mikittyさん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!! (2021年1月26日 16時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結まで追い続けます! (2021年1月25日 12時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - マームさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!なかなか更新できていませんが、頑張らせていただきます!! (2020年6月28日 10時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
マーム - めっちゃ好みすぎて何回も読み返しています!!更新頑張ってください!! (2020年6月24日 23時) (レス) id: 12bdf0a400 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:龍牙 | 作成日時:2019年5月11日 19時