55.メイク、どきどき。 ページ11
「秀ちゃん、じっとしてて」
Aは明智の顔をじっくりと見る。
はっきりとした顔立ちだし、目もぱっちりとしている。アイライナーは囲わなくてもOK。色はブラック。
金色のウィッグをつけるならリップはあんまり派手じゃなくていい。そこまで考えてAは小さく頷いた。
「よし、ありがと秀ちゃん。ちょっと使うコスメ決めるから待ってて」
彼はAの声に、目を開いてAの方を見た。机の上に置かれたバニティポーチにはコスメが溢れんばかりに入っている。それを見て、明智は驚いた。
「それ全部Aのコスメ？」
「そうだよ、高いものはないけど…」
そう言いながら、Aはリキッドファンデーションを手に取る。少しだけ手の甲にそれを出すと、Aは色を確かめるように明智の顎にそれを塗る。触れた指がくすぐったくて、明智は目をつむった。
「ん、ぴったり。後はシャドウとライナーと……」
呟きながら、ポーチから探す。やっぱりメイクを考えるって楽しい。Aの口元は綻んだ。
何故Aが明智にメイクをする事になったのか。話は少し前に遡る───。
豪林館高校が毎年開催している文化祭＿＿通称ゴリ高祭。中庭では模擬店、教室ではお化け屋敷などのクラス展示が行われる。
そして今年もゴリ高祭の季節がやってきた。
ある日のHR。A達の2年3組も文化祭の出し物について話し合っていた。
盛り上がる女子達からは、クレープ屋、カフェなどといった意見が積極的に出される。
｢はい、ちょっと待って。ちょっと男子〜、やる気あるんですか〜。ちゃんとやる気だしてくださ〜い｣
突然のぶおにそう言われて、全く意見を出していなかった男子達は各々顔を見合わせた。
｢どうなんですか、駒井とか｣
｢えっ、俺？｣
名指しされた駒井は、驚きに目を瞬く。
｢えぇっと……、脱出ゲームとか？｣
｢捻れば出るじゃない、アイデア。いいね、流行りそうだし。ほかは？若林｣
｢えっ｣
Aは、名指しされた隣の席の若林に目を向ける。彼もまた突然の指名に驚いていた。
｢僕は、別に……｣
｢『僕は別に』とかさぁ、皆でやるんだからさぁ｣
｢えぇ？じゃあのぶおが働いていた店をやるとかは？｣
若林の提案にクラスはわっと盛り上がる。楽しそうだ、バーみたいなのやるの？など、クラス中から様々な意見が溢れてくる。
こうして。
今年のゴリ高祭、2年3組は女装男装バーを開店する運びとなったのだった。
56.red or pink→←54.完璧じゃなくてもいいから
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 356人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れ - 面白いから更新されないの悲しいです (2022年5月13日 0時) (
レス) id: 36b0096a5e (このIDを非表示/違反報告)
Mirai(プロフ) - もう更新されないのでしょうか？ (2019年10月4日 14時) (レス) id: 0ee5b43c16 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 涼宮美桜さん» こちらにもコメントありがとうございます〜！頑張ります！ (2019年8月2日 12時) (レス) id: f75a474b38 (このIDを非表示/違反報告)
涼宮美桜 - 続編、おめでとうございます！！これからも更新頑張ってください！！応援してます！！！ (2019年8月1日 19時) (レス) id: 67fa9efd8d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はな x他1人 | 作成日時：2019年7月30日 13時
