[幻想旅団]齎す旅団 (ページ31)

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本当のさよならページ31

「さあ、本当のさよならだよ」

嗚呼、ヒセンの声が聞こえる。

これまでも、これからもちゃんと聞こえていた。全部、あますことなく。

体は自由に動かないのに、思考だけは止まれない。

声をかけたいのに、引き止めたいのに、目覚めることができない！

そして、理解してもいるんだ。

ヒセンはそれを望んでない。俺がしていいはずもない。

盗賊なんだから、ヒセンの気持ちなんてまるきり無視して、理不尽な運命なん
てぶちこわして…ヒセンを救う、いや俺のわがままを通してしまいたい。

でも、できない。どうしても。

俺は、またヒセンを見殺しにしてしまう。今度は自らの意思で！

サラサラ―――サラサラ―――。

少しずつ、少しずつ、手のひらから零れ落ちていく。

このまま、時間を止めれたらいいのに。砂時計の砂が止まってしまえば。

滑り落ちていく命も、流れ込んでくる知識も情報も、止まってくれよ……！！

それでも、ヒセンは笑う。嬉しそうに、悲しそうに――

「さよなら、サクヤ。ありがとう」

彼女は俺だし、俺は彼女自身だ。そして、そうでなくもある。

「ごめん…ごめんっ……！俺の、せいでッ！！」

おぼろげな意識の中、叫ぶ。

頬に熱いものが伝っていく、とめどなく溢れてくるものは止めようがない。

それを、誰かが拭う。

「なんで、君もそれを言うのかな……？」

疑問形でありながら、答えを求めていない。懐かしげに俺を見つめている。

そうだ、彼女はヒセンそのものでも、俺そのものでもない。

彼女は、彼女だ。

「最後にね、ヒセンも…そう言ってたんだ。ごめんって。

でもね、でもね……私、後悔はしてないよ。そりゃ、幸せとは程遠い人生だった
かもしれない。君やヒセンが申し訳なく思うのも当然かもしれない。

でも！それを決めるのは私自身！だから、私がいいっていったらいいのっ。

それでも、自分を責めるなら、私の分も『幸せ』になって」

パキリ、サラサラ――――

ああ、今度こそ

「さよなら」