31話 ページ32
いかがでしたか?この物語は。
これだけではわからない?では、そうですね、少しだけ少女達の行く末を少しお話いたしましょう。
松陽と呼ばれた少年はその後、別の人間達に捕らえられ迫害を何百年も受けていました。その時彼は己の中に複数の人格を作りました。…いえ、彼、松陽がと言うよりも松陽が作られた複数の人格の内なのです。主人格は虚と言いました。何百年と経つと幽閉されていた檻は朽ち、虚は己の苦しみを復讐して廻るように人間を襲い始めます。彼は人間になろうとしていたのかもしれません。人間が自分にやった行為をそのまま模範したのですから。後に朝廷に捕われ、暗殺組織天照院奈落首領となりそれから何百年、人を殺すことだけを続けていました。
朝廷は彼の力を利用し、彼もまた朝廷の力を利用したのです。朝廷は己が権力の維持のために。虚は届かぬ死への渇望とあの時の少女のいない世界と永久に続く生への絶望を終わらせるために。
Aと呼ばれた少女はその後、己を迫害し続けた人間達に復讐をしに行きました。復讐が生きていく理由を探した結果でした。彼女には彼しかありませんでしたので、空いた穴は塞がることはありませんでした。村の人間を鏖にしても埋まることはありません。ただ虚しいだけでした。
何百年と時を重ねるとゆっくりですが少女は大人の女性になります。元々整った顔立ちでしたから、さらに端正な顔立ちへと成長しました。普通の女性ならば朝廷から声がかかっても仕方がない容姿です。しかし彼女の居場所は戦場でした。人としての生活がわからない彼女は人を殺すことだけを知っていました。己を殺せないのに他人の殺し方を熟知してるなんて皮肉なものです。彼女は直ぐに噂となりました。「戦場に鬼が出る」と。彼女は戦場で人間を殺し食べ物や衣類、武器を奪い生活していました。彼女には殺すことしかなかったのです。
彼らは全然違う生き方をしていました。しかし共通点がありました。それはあの日の水晶をちゃんと持っているということです。何百年も持っていたのです。もう一度出会えると信じ、水晶を持っているのです。
さて、ここまでにいたしましょうか。この物語は終わりかって?まだまだ続きますよ。
ではまたお会いいたしましょう。
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作者名:月光 | 作成日時:2018年6月2日 16時