足りないもの ページ36
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センターが決まり、全員が各々の練習室に戻り始めているとき、別の部屋に行く角を曲がった人がいた。
『たじくん』
「あれ、Aちゃんどうしたの？」
まさか人が来るとは思わなかったのか、既に目には水が溜まっていた。
『そういえばお水が無かったなって思って』
泣くほどの悔しさならば、会って1週間の女に慰められるのも違うかなと思い1人にすることにした。
……した、んだけど、
「ごめん、落ち着くまで居てほしい」
居るだけでいいから、と腕を掴まれてしまった。
『たじくんが望むなら、でももうちょっとあっちまで行きましょう』
まだ角を曲がってすぐの所だったため、水を買いに来る練習生がいたら目に入ってしまう。
私の提案に頷き、腕を持ちながら人が来なさそうなところまで歩く。
壁に背を預けた状態で床に座り、横並びになった。
多分、10分くらいそのまま。
隣から鼻を啜る音が時々聴こえてくるだけの時間が過ぎていく。
「…さっき居るだけでいいとか言ったのにごめん。Aちゃんのこと困らせるかもしれないけど、1つだけ聞いてもいい？」
『うん、何？』
「柾哉くんと、俺と…何が違うんだろう。何が、足りないんだろう」
確かに、困る質問だ。
伝えたい事は頭に浮かんでいるのに、言葉を選ばないと傷付けて、より悩ませてしまう。
『それは、今回のセンターのこと、だよね』
自分の足元に視線を送っているため自然と頭が下がったたじくんが、更に頭を下にした。
『正直に言うね。柾哉くんの方が、表現することを楽しんでるように見えた』
思っている事があるのに、包み隠して励ましの言葉だけを送るのは良くないかなって。
単純にそう思って、素直に伝えた。
「俺は、楽しんでるようには見えなかった？」
『カッコよく表現はしてたけど、楽しそうかって聞かれると即答はできない感じかな。自分の魅せ方を知りすぎて、それに囚われてる気がする』
そっか、と言いながら視線の先は変えていない。
やっぱり私は人を慰めるのとか、向いていないと思う。
個人に合わせてどんな風に答えたらいいかなんて到底分からない。
「うん…、俺も、そう思ってたんだけど、気付いてないふりしてただけかも」
たじくんもそういう事はあるんだなあ。
「俺が違うところに行こうとしたのに気付いてくれたのがAちゃんでよかった」
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雪 - soonさん» ありがとうございます！ これからも応援しています！！ (2023年1月26日 23時) (
レス) id: 80f4887f85 (このIDを非表示/違反報告)
soon(プロフ) - 雪さん» コメントありがとうございます！そのように仰ってくださり本当に嬉しいです！お仕事前に1話でも更新できるよう頑張ります！笑 (2023年1月25日 13時) (レス) @page45 id: b8513acb6a (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 初めまして！毎日仕事前にこちらの作品を読むのが日課になっています！笑 言葉遣いや雰囲気がとても好きです！！ 主様のペースでこれからも更新していただけると嬉しいです。応援してます！ (2023年1月25日 9時) (レス) @page45 id: 80f4887f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：soon | 作成日時：2022年12月28日 21時
