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冬の夕と夜のあわいの空は、曇天なのも相まって薄暗い。雨や雪が降っていなくて良かった。背負ったAさんの体は熱く、ぐったりと力がない。本当にこの人は、熱を出してからでないと風邪をひいたことにも気が付かないのか。
兄の方も抜けていると思ったが、彼女はそれ以上だ。お人好しで、お節介で、家事だってほとんど手を抜かないところから見るに、真面目でかつ見栄っ張りなのだろう。無理をさせてしまったのは、俺と言う異物が現れたからでもある。
あまり振動を与えないように慎重に歩いていると、背中のAさんがぼそりと呟いた。耳の近くで吐き出された吐息交じりの声は、こんなときでなければ艶っぽさすら感じさせる。
「やめとけば、よかった、って、おもってるでしょう」
「何を？」
「重いよね･･････」
「ああ、その話。重くないよ」
「うそ、うそだー、･･････お兄ちゃんがいなくなってから、食事にあまり気を遣わなくなっちゃって、結構太ったんです･･････」
「なら、俺が来てから痩せたんじゃない？」
「痩せたように見えますか？」
「そうだな･･････。あまり変わってない」
「嘘でも痩せたって言ってほしい･･････」
「ふふ、悪い」
実際、背に居る彼女は重いうちには入らない。小柄だし、形状に関して言えばこの前の炬燵の天板の方が持ちにくかった。車のライトが前方を照らして、俺たちを追い抜いていく。赤いテールランプが十字路を左折していくのを眺めながら、この状態に随分と馴染んでしまった自分を感じる。
背に居るAさんが何かを呟いた気がした。雪を踏みしめた靴音に殺されたその声を、俺は尋ね返すこともせず、その体の熱や重さを自身に刻み付ける。
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taka10(プロフ) - 少しずつ変化していくふたりの心情に、胸が締め付けられます…… 折り返し過ぎてしまって、どんな結末を迎えるのか楽しみでもあり、不安でもあり、そしてやはり終わってほしくない、ずっと見ていたい気持ちもあります… 無理なさらず更新頑張ってください。 (2月25日 8時) (
レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ(プロフ) - taka10さん» コメントありがとうございます。いつか別れが来るとわかっていながら、距離を近づけていくことを意識しているのでそう言っていただけてとても嬉しいです！まだ半分程度ではありますが、完結までご一緒いただけると幸いです。 (2月4日 22時) (レス) id: 05a7068e83 (このIDを非表示/違反報告)
taka10(プロフ) - 丁寧な距離感の描写がとても素敵です。もどかしいような、じれったいような、でも終わってほしくないという矛盾した気持ちになりながら読ませていただいています。 (2月4日 16時) (レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年2月3日 13時
