Nineteenth day ページ25
Aさんの学校までの道程は、大通りに着くまでが暗く、人通りも極端に少ない。心許ない街灯がぽつぽつと地面に淡い光の楕円を落とす中、徐々に厳しくなってきた寒さを自覚する。
雪は常に数センチは積もったままなかなか溶けず、天気はほぼ曇天、雨、雪時折吹雪、寒がりらしいAさんはひいひい言いながらも毎日学校に通っている。今週が終わったら冬休みだから、と自分自身を鼓舞している様子はなかなか健気だ。
「冬休みになったら私はだらけるんです･･････」
その休みとはどれくらいあるのか尋ねようとして、咄嗟に飲み込んだ。先の話はなるべく避けたかった。俺は彼女の堕落した決心に曖昧に頷きながら、無意識にカレンダーに目をやる。彼女がそんな俺の視線の先を見ていたことなど気付かずに。
午前中に授業が終わった昨日は兎も角として、日が落ちるまで学校から帰ってくることのできない日は、俺は彼女を校門まで迎えに行くことにしていた。もう彼女に付きまとっていたあの男に何かされる心配は少ないとはいえ、やはり女性が一人で帰路につくには今の季節は暗すぎる。
学校を挟んで家から反対側にある駅に向かう学生は大勢いるが、新興住宅地やAさんが住んでいるようなマンションに住まう学生はほんの一握りだ。
日の長い季節ならまだしも、そうでないこの時期に彼女を一人歩きさせることはどうにも心配だった。
校門について少しばかり待っていると、彼女は大体小走りでやってくる。駅とは真逆の門から出入りする生徒はこれまでに数人ほどしか見たことがなく、人目がほとんどないことに気を抜いているのだろう。
授業が終わったのがそんなに嬉しいのか、時折笑いながら軽く体当たりまでしてくるものだから、本当に彼女は年相応には見えない。
無防備さに閉口することもままあるが、あの天真爛漫さに俺は確かに救われていた。
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taka10(プロフ) - 少しずつ変化していくふたりの心情に、胸が締め付けられます…… 折り返し過ぎてしまって、どんな結末を迎えるのか楽しみでもあり、不安でもあり、そしてやはり終わってほしくない、ずっと見ていたい気持ちもあります… 無理なさらず更新頑張ってください。 (2月25日 8時) (
レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ(プロフ) - taka10さん» コメントありがとうございます。いつか別れが来るとわかっていながら、距離を近づけていくことを意識しているのでそう言っていただけてとても嬉しいです！まだ半分程度ではありますが、完結までご一緒いただけると幸いです。 (2月4日 22時) (レス) id: 05a7068e83 (このIDを非表示/違反報告)
taka10(プロフ) - 丁寧な距離感の描写がとても素敵です。もどかしいような、じれったいような、でも終わってほしくないという矛盾した気持ちになりながら読ませていただいています。 (2月4日 16時) (レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年2月3日 13時
