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くしゅ、とくしゃみをすると、スマイルさんがす、と立ち上がってキッチンへ向かった。まだ番組は続いているのに、良いのだろうか。電気ポットに水を入れながら、「コーヒーで良いか？」と尋ねるので、私は咄嗟に「私がやりますよ」と口にする。しかしスマイルさんは首を振った。
「寒いんだろ。暖まったほうがいい」
突然の気遣いに面食らって言葉を失う。スマイルさんは意地悪なところもあるけど、普段は気が利いて優しいのだ。私はお礼を言いながら、スマイルさんが観ていた番組の続きを眺めた。
ゆったりとした時間が流れているように見える異国の海は、果てしなく青い。小舟の先頭で日向ぼっこをする猫の細い目、四角く切り取られた窓の先の黒い闇、子供たちの笑い声の中、スマイルさんが「超安い粉のコーヒー」の入った蓋を開ける音がする。
スマイルさんが座る座布団の薄さ、テーブルの上に置かれた私のものではない本、彼が使っていたマグカップはまだ中身が半分ほど残っていて、私は彼がここにいることの不自然さをはっきりと自覚しながら、それでも縋りつきたいと思ってしまう。
「あーあ」
呟いた声は、テレビから流れる穏やかな声にかき消されるほどに小さく、弱い。
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taka10(プロフ) - 少しずつ変化していくふたりの心情に、胸が締め付けられます…… 折り返し過ぎてしまって、どんな結末を迎えるのか楽しみでもあり、不安でもあり、そしてやはり終わってほしくない、ずっと見ていたい気持ちもあります… 無理なさらず更新頑張ってください。 (2月25日 8時) (
レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ(プロフ) - taka10さん» コメントありがとうございます。いつか別れが来るとわかっていながら、距離を近づけていくことを意識しているのでそう言っていただけてとても嬉しいです！まだ半分程度ではありますが、完結までご一緒いただけると幸いです。 (2月4日 22時) (レス) id: 05a7068e83 (このIDを非表示/違反報告)
taka10(プロフ) - 丁寧な距離感の描写がとても素敵です。もどかしいような、じれったいような、でも終わってほしくないという矛盾した気持ちになりながら読ませていただいています。 (2月4日 16時) (レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年2月3日 13時
