eighteenth day ページ22
月曜日の授業が終わった後、眼科の午後の診察時間まで調整するために一度家に帰ると、スマイルさんは珍しく炬燵に入ってテレビを見ていた。炬燵テーブルの上には例の夏目漱石に関する本が置かれていたが、どうも読了したらしい。コートを脱いでソファの背中にかけながら、「珍しいですね。何を観てるんですか？」と尋ねるも、視界に入ったテロップで私はそれが一般の二十代男性が好んで観るような番組ではないことを知る。「世界の街並み」と題されたそこには、煉瓦造りの四角い建物が連なる街の夕暮れが映っている。入り組んだ路地の先にひっそり佇む小さな像、精巧な風見鶏、オレンジのなる木々、温かい地中海の春。
「ああ、おかえり」
言いながらスマイルさんは私の方に顔を向けた。昨日買ってもらった、と言ってもレンズに損傷がなかったおかげで、フレームだけを交換した眼鏡はすこぶる調子が良く、スマイルさんの真剣な表情すら察することができる。
「旅行には結構行くんですか？」
「ん？」
「海外旅行とか」
「ああ、うん、そっくりとは言えないけど、雰囲気の近い街は知ってる」
「へ〜あったかそうでいいな」
「きみはそればかりだな」
「寒いの苦手なんだもん･･････」
炬燵に入って暖をとるけれど、大学からここまで数十分寒空の下を歩いてきた体はそう簡単には温まらない。そろそろストーブを出すべきだろうか。毎年使っている灯油ストーブは私の部屋の押し入れに入っているけれど、灯油を買ってくるのも億劫だしそもそも私は灯油が入れられない。
去年の冬までは、そのどちらも兄がやっていてくれたのだ。いっそ電気ストーブを買うべきか。コストはかかっても、便利さには変えられないだろう。
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taka10(プロフ) - 少しずつ変化していくふたりの心情に、胸が締め付けられます…… 折り返し過ぎてしまって、どんな結末を迎えるのか楽しみでもあり、不安でもあり、そしてやはり終わってほしくない、ずっと見ていたい気持ちもあります… 無理なさらず更新頑張ってください。 (2月25日 8時) (
レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ(プロフ) - taka10さん» コメントありがとうございます。いつか別れが来るとわかっていながら、距離を近づけていくことを意識しているのでそう言っていただけてとても嬉しいです！まだ半分程度ではありますが、完結までご一緒いただけると幸いです。 (2月4日 22時) (レス) id: 05a7068e83 (このIDを非表示/違反報告)
taka10(プロフ) - 丁寧な距離感の描写がとても素敵です。もどかしいような、じれったいような、でも終わってほしくないという矛盾した気持ちになりながら読ませていただいています。 (2月4日 16時) (レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年2月3日 13時
