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「北極星が見える」
「は？北極星？」
「あれだよ、あそこにある」
「どれ･･････？」
「カシオペヤ座があるだろ、そこから」
「えっカシオペヤ？」
「････････････」
黙られてしまってスマイルさんの顔を見ると、彼は憐れんだような目で私を見下ろしていた。馬鹿にされているらしい。でも、星座の話を突然振られて会話についていける文学部の女子大生がそうそういるだろうか。
そう言い返したいところではあるが、「教養の範囲じゃないか？」と真面目な顔で問われたので、私は目を逸らしながら口ごもる。
「す、スマイルさんはなんで知ってるんですか、教養の範囲だからですか･･････」
「数日前に北極星を目印にして地図を作り上げた人物の本を読んだから、興味がわいて」
「うわ、なにその向学心･･････」
「普通だと思うけど･･････」
「･･････見習わせてください」
マンションが近づき始める。寒さからくる指先の感覚が乏しくて、息を吐いて温める。白くなった二酸化炭素が空気に溶けて、私はその奥に浮かぶ冬の星を見上げた。
カシオペヤ、北極星、もしも星に興味があって、当たり前のようにこの星々の中からそれを見つけることができていたら、私は少しでも彼をもっと身近に感じることができたのだろうか。
民家から漂ってくる煮物の香りにお腹を空かせながら、私は星を見上げる彼の隣で、夕飯の献立について考え始めていた。
そうでもしなければ、私は自ら閉じた目をこじあけるも同義だった。
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taka10(プロフ) - 少しずつ変化していくふたりの心情に、胸が締め付けられます…… 折り返し過ぎてしまって、どんな結末を迎えるのか楽しみでもあり、不安でもあり、そしてやはり終わってほしくない、ずっと見ていたい気持ちもあります… 無理なさらず更新頑張ってください。 (2月25日 8時) (
レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ(プロフ) - taka10さん» コメントありがとうございます。いつか別れが来るとわかっていながら、距離を近づけていくことを意識しているのでそう言っていただけてとても嬉しいです！まだ半分程度ではありますが、完結までご一緒いただけると幸いです。 (2月4日 22時) (レス) id: 05a7068e83 (このIDを非表示/違反報告)
taka10(プロフ) - 丁寧な距離感の描写がとても素敵です。もどかしいような、じれったいような、でも終わってほしくないという矛盾した気持ちになりながら読ませていただいています。 (2月4日 16時) (レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年2月3日 13時
