fifteenth day ページ14
金曜日の一限目、授業で使う教室に入ってきた彼は、いつも一緒にいる友人たちとは距離を置いているように見えた。数日間授業を休んでいたことを心配されても、彼は曖昧な微笑を浮かべて友人たちから離れた席に座る。
私の言葉のせいで周囲を警戒しているのかもしれない。実際は誰にも殴られたなんていう話はしていなかったけれど、教室の隅で一人で文庫を読む彼は近寄りがたい雰囲気を放っていた。
「A、おはよう」
「あ、おはよう」
友達に名前を呼ばれた瞬間、本に落とされていた視線が僅かにこちらに向けられた心地がしたけれど、彼は顔をあげた私の目線から逃げる様に、再び顔を背ける。
「まぁ良かったんじゃないか。あいつも懲りたんだろ」
スマイルさんはもう彼のことが解決した今、既にその必要がないのに「散歩してた」と門から出てきた私を出迎えた。断ったにも関わらず、登校時も送り届けてくれたことを思うとこれは想定内のことではあったが、どうにも申し訳なさが募る。
朝薄らと積もっていた雪は既に溶けていた。頬を刺す冷気にマフラーを鼻のあたりまでひっぱる。
「はい。どうもありがとうございました。ご迷惑おかけしました」
「迷惑なんて全然。Aに頼まれてたから」
スマイルさんは何の気なしに兄のことを口にした。彼がその言葉を口にする度、心がからからと乾いていくような、不思議な感覚になる。
けれど、それが意味することを考えるのは億劫で、私はすっかり暗くなった歩道に湿ってこびり付いた葉を踏みながら、脳の外に追いやることに執心する。
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taka10(プロフ) - 少しずつ変化していくふたりの心情に、胸が締め付けられます…… 折り返し過ぎてしまって、どんな結末を迎えるのか楽しみでもあり、不安でもあり、そしてやはり終わってほしくない、ずっと見ていたい気持ちもあります… 無理なさらず更新頑張ってください。 (2月25日 8時) (
レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ(プロフ) - taka10さん» コメントありがとうございます。いつか別れが来るとわかっていながら、距離を近づけていくことを意識しているのでそう言っていただけてとても嬉しいです！まだ半分程度ではありますが、完結までご一緒いただけると幸いです。 (2月4日 22時) (レス) id: 05a7068e83 (このIDを非表示/違反報告)
taka10(プロフ) - 丁寧な距離感の描写がとても素敵です。もどかしいような、じれったいような、でも終わってほしくないという矛盾した気持ちになりながら読ませていただいています。 (2月4日 16時) (レス) id: fe4fec6c9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年2月3日 13時
