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「兄のご友人なんですね。兄が迷惑をかけたでしょう」
「いえ、引き受けることを決めたのは俺なので」
「スマイルさんは兄と同い年なんですよね？敬語じゃなくて大丈夫ですよ」
「ああ･･････なら、そうさせてもらおうかな」
含んだような笑みを浮かべるスマイルさんに、私はなんだか煮え切らないような気持ちにさせられる。人好きのする雰囲気を持った人だと思ったけれど、何だか一癖ありそうだ。だけど兄はこの人を信頼しているようだし、それでも今は私も信用する他ない。「あの」本当は聞きたいことが山ほどある。前のめりになりすぎて掴みかかってしまいそうな自分を制するように、一つ咳払いをした。
「･･････スマイルさんから説明してもらうようにと書いてあったのですけど」
「Aがそう書いたのか？」
「え？はい」
「冊子読んだかどうかの確認か･･････？」
「冊子？」
「ああ。･･････自作の冊子。チャート式になってる。持ってくればよかったかな」
真剣に考えるスマイルさんに何だか笑ってしまいそうになりながら、マグカップで口元を隠す。まだ緊張感は解れないけれど、兄と彼の繋がりは確かだ。例え、この後に彼が語ったことがいくら突飛な話であっても、信じざるを得ない。
まるで一昔前に流行った漫画のようなストーリーだったけれど、兄が半年前に姿を消したのは事実だし、こうして私のことを人に頼んでいたのも、手紙をしたためてくれたのも、夢ではなく現実だ。彼の話を一通り聞き終えた私は、彼を信頼すべきだと思っている。彼にその気はないのかもしれないけれど、スマイルさんの兄を語る口調は穏やかで、強い信頼関係の元にあることは疑いようがなかった。だけど。
「Aさん」
「はいっ」
名前を呼ばれて咄嗟に姿勢を正す。いつも兄が座っていた向かいの椅子に座るスマイルさんの双眸は真っ直ぐこちらへと向けられていて、私は何だか居たたまれないような気持ちになった。
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年1月21日 12時
