【WT】さよならを後ろから数える【sm】 (ページ36)

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物騒なことを言いだしたスマイルさんに口を尖らせる。ふと考え込んだ様子を見せたスマイルさんは、しかし得心が言ったように頷いた。

「俺が吊るすよ。貸して」

「椅子に乗って自分でつけます」

「意地をはらなくても。また落ちるぞ」

「･･････」

思案の末、口を尖らせたまま彼にてるてるぼうずを手渡すと、スマイルさんは「ふふ」と得意の笑みを漏らしてカーテンレールにふたつのてるてるぼうずを下げてくれた。その広い背中を、私は既視感を持って見つめている。

朝食をすませた後、二人でマンションを出た。昨日や一昨日に比べれば寒気が緩んだような気配があるが、寒さに弱い私はマフラーに顔を埋めていなければ耐えられそうもない。上着を一枚羽織っただけのスマイルさんは、「今日は雨は降らなそうだな」と、余裕のある口ぶりで呟いた。寒くはないのだろうか。コートのポケットから手を出せない私は、身を縮こまらせながら言う。

「天気予報では夕方から雨っていってましたよ」

手袋がほしい。雨が降ってはいないまでも、冬らしくどんよりとした重たい雲が覆う空を、そんなことを考えながら見上げる。日中は持ちこたえるらしいとお天気おねえさんが言っていたので、リュックの中に折り畳み傘を入れるだけに留めたが、これで雨まで降り始めたら最悪だ。
スマイルさんの言葉に縋りたい気持ちでいる私に、彼は「そう」と曖昧に微笑んだ。その笑顔が隠すものの正体を、私はどこかで意識している。