ninth day ページ35
朝目を覚ましてリビングに行くと、炬燵テーブルの上に私が作ったもののほかに見覚えのないてるてるぼうずがもう一つ置かれていることに気が付いた。
寄り添うように転がっているそれは、顔が書かれていないものの私が作ったものよりもよほど丁寧で、私は二つのそれを持ち上げて東向きにとられた窓の隙間から漏れる光に透かしてみる。
間抜けな笑顔を浮かべる私の作ったてるてるぼうずと、表情のないもうひとつ。カーテンを開けて見ると連日まで続いていた雨があがっていた。冬の朝だ。まだ闇の残る深い灰の雲の合間を縫うように伸びた赤みがかった光は、私の住む街を照らしている。背の低いビル、夏に出来たばかりのマンション、数日前にスマイルさんと出かけた洋品店がある商店街はここから近く、耳を澄ますと車の排気音が聞こえる。
チェストから資源ごみを縛るときに使う麻紐を取り出して、てるてるぼうずの首に結ぶ。カーテンレールのあたりにひっかけようかと思ったけれど、どう考えても届かない。椅子を持って来ようと振り向いたところで、リビングの扉の入口にスマイルさんが立っていることに気が付いた。
早朝から物音がすると思っていたけれど、とっくに起きていたらしい。既に身なりを整えて服まで着替えたスマイルさんは、私の手に持っている物を見ると静かに目を細めた。
「･･････首つりでもさせるのか？」
「首つり！？」
「昨日きみが眠ったあとで作ったけど、 てるてる坊主ってどうして高いところに吊るすんだろうな」
「高いところに吊るすことを首つりって言うのやめてくれませんか！？」
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年1月21日 12時
