【WT】さよならを後ろから数える【sm】 (ページ29)

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居間で一人になると、俺は彼女と二人で完成させた炬燵をまじまじと観察した。どこにケーブルを繋ぐんだろうか。ケーブルを探しにAの部屋の向かいに位置する両親の寝室に戻ったAさんはなかなか戻ってくる気配を見せなかった。
待っている間、テレビでも見ていたらいいと言われたが、彼女がつけるバラエティ番組は正直情報量が多くてくたびれる。だけど、善意から勧めてくれる彼女に直接伝えるのは憚られた。

待っている間の時間が手持無沙汰で、炬燵布団に手をかけて、何の気なしに捲ってみる。中に腕を入れてみたところで、むしろひんやりとしている気すらしてくるが、電源の入れていない暖房器具なんてこんなものか。

最初Aに頼まれたときは、面倒なことを押し付けられてしまったと思ったが、一月ばかりの慰安だと思えば悪くもない。

腕を引いた瞬間、偶然天板の裏に手の甲が触れる。その時の感触を不思議に思って、布団をきちんと捲って光を取り込みながら中を伺った俺の口から、「あ」と自然と声が漏れた。ちょうどそのとき、Aさんが向かった部屋の方から大きな物音が響く。これは何かあったな、そう考えながら、中天板の裏に貼りつけられていた、ケーブルを取り外し、俺は彼女の元へ向かった。

「中天板の裏にあった」

部屋の外から声をかけると、Aさんは足を抑えたまま顔をあげて「なんだよも〜！」と少々品のない口調で叫んだ。体制から、どうもつま先を強打したらしい。涙目になった彼女は立ち上がると、片足でひょこひょこと歩きながら「お兄ちゃんめぇ」と憎々しげに呟いて俺の手からケーブルを受け取ったが、今回のこれに関してはAの行動は理にかなっているような気がした。