sixth day ページ27
我が家の炬燵は、一年中出ている。と言っても勿論布団をかけてあるわけではない。天板と脚がウォールナットでできたそれは見た目も普通のテーブルと遜色なく、布団さえ取り払っておけば一年中使える、という良くある代物だ。
炬燵布団と専用のマット、内側にかける薄い毛布を両親が寝室として使っていた部屋のクローゼットから持ってくると、スマイルさんは不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「一旦テーブルをどかしてこのマットを敷きます」
「ああ。持ち上げようか？」
「あっ天板が動くと悪いので一旦外してからの方がいいかもしれません」
「なるほど」
スマイルさんは私の言葉に素直に頷いて、テーブルの天板だけを持ち上げた。両親共に健在だった数年前に購入した四人用のそれは、男の人とは言え一人で持つには少し大きいように思われたが、彼は真ん中のあたりを上手く持って一度床に置く。「あぁ、こんなに簡単に外れるのか」そう言いながら続けて天板と分離した脚部分を持ち上げてくれたので、私は慌ててマットを敷いた。去年のお兄ちゃんが「は、はやく、はやく敷け！！」とぷるぷるしながら叫んでいたのを思い返すと、スマイルさんは頼もしい。
敷き終わったマットの上に脚が戻される。その上に薄手の毛布と炬燵布団を調節しながら掛けて、スマイルさんに天板を置いてもらえば完成だ。
「は〜！炬燵だ〜！」
「これで完成か」
「完成です！･･････あっ」
「どうした？」
「ケーブル！電源！ないとダメ！」
電気炬燵である以上、ケーブルがなければその温かさは九割減だ。「ケーブル･･････」と首を傾げるスマイルさんを置いて、私は両親の寝室に戻る。炬燵布団が置いてあったのだから、多分その近くにビニール袋か何かに入れた状態で置いてあるはずだ。
両親のクローゼットは私の部屋のそれと違って整頓されきっているけれど、私は構わずに奥にあったものを床に出していく。しかしどれだけ探しても、目当てのものはなかった。
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年1月21日 12時
