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さっきまで私が見ていたバラエティ番組はニュースか何かにかえるべきかと思ったけれど、何だかスマイルさんのために変えてあげるのも癪で、私は手にしかけたリモコンをテーブルに置いて三人掛けのソファの隅っこに腰を下ろした。
スマイルさんは隣に座るものかと思ったが、私から少し離れたテーブルの横に腰を下ろす。ラグが敷いてあるとはいえ、座布団もクッションもないんだから座り心地は良くないだろうに。そんなに私の隣に座りたくないのか、と口を尖らせた私を無視するように、スマイルさんは「いただきます」と言って林檎に手を伸ばした。百均で買った動物を模したピックは、彼の手にあると随分小さく見える。
「ああ、これ美味いな。瑞々しい」
「林檎、先週親戚から送られてきたんです。まだいーっぱいありますよ。お兄ちゃんが居たときは剥けば剥いただけ食べてくれてたんですけどねえ」
両親が健在だった頃と変わらない大きさの箱に詰められて送られてくる林檎は、嬉しい反面食べきることを考えると億劫だ。大学の友人に少し持って行ってもらったけれど、それでもみんな、そんなに多くは貰ってくれるわけではない。ピックに刺した林檎を口に入れると、途端に甘酸っぱさが口に広がった。残りはジャムにするか、時間があればアップルパイを焼いても良いんだけど、パイシートがないし作る気もない。
「あ、でもスマイルさんに食べて貰えばいいのか」
「俺でよければ」
「でもなー、スマイルさんって呼んでも部屋から出てきてくれないんだもんなあ」
「出てきただろ」
「何回声かけたと思ってるんですか。今度から部屋、返事がなかったら勝手に開けてもいいですか？」
「･･････着替えていたらどうする？」
「････････････」
思いもよらぬ返答に、私は眉を寄せて言葉を詰まらせる。一瞬想像上のスマイルさんの裸が脳裏を過ってしまって、目を逸らした。「･･････どうしましょう」兄の着替えシーンだったら何度も出くわしたことがあるけれど、それが全く血の繋がらない他人だったら気まずい以外の何物でもない。うーんと唸る私に、スマイルさんは小さく笑う。
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年1月21日 12時
