【WT】さよならを後ろから数える【sm】 (ページ20)

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彼女は言いながら調理をしていた手を止める。Aの妹は洗面所の方に足を進めながら、「こっち」と手招きをする。
脱衣所に入ると彼女は洗濯機の扉に手をかけた。中が大きな空洞になっているそこを開くと、「あっやっぱ見ないで」と何故か彼女はもう一度それを閉める。不思議に思って彼女の顔を見ると、僅かにその頬に赤みが差している。「ごめんなさい、私が着てた服、もういれちゃってたんだった」何が恥ずかしいのか分からないが、彼女が嫌がることをするのは本意ではない。

「と、とりあえず今日は私がいれておきますので、このかごに洗濯物があったらいれてきてもらえますか！」

「俺もきみに自分の汚れ物を見られるのは恥ずかしいんだけど」

「何言ってんですか！こっちはそんなもん見慣れてますから！レディファストしてください！」

「なら余計にきみにそんな汚いものを触らせるわけにはいかないな」

本意ではないが、この子が顔を真っ赤にして慌てるところを見るのはなかなか楽しい。Aの妹はぎゅっと眉根を寄せると、痛いくらいにかごを押し付けて来て叫んだ。

「もー！！いいからここに入れてきてくださいって！！そうしないとご飯あげませんからね！！」

「それは困るな」

「そうでしょ！？分かったら早く！持ってきてください！」

脱衣所から背中を押されて追い出され、俺はすっかり彼女のペースに巻き込まれてしまっていることに気が付いて笑みをこぼした。
なるほど、彼女は確かにAの妹だ。かごに汚れ物を入れて脱衣所に戻ると、彼女はしっかり待ち構えていた。俺から奪うようにかごをひったくると、なるべく触れないように逆さにして、洗濯機に衣類を放り込む。
窓から差し込む朝陽の中、手慣れた様子でそれを稼働させる彼女の後ろ姿を見て、俺は徹夜をしたことの負担が体にかかっていることに気が付いて、欠伸を噛み殺す。