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この家にやってきて三日目の朝を迎えた。俺に宛がわれたAの部屋は狭く、ベッドのサイズも正直に言うと窮屈だ。北向きの窓はまともに日光をとらないし、掃除が行き届いていなかったのか埃っぽい。あまり居心地がいいとは言えない部屋だったが、部屋に置いてあった書物はなかなか興味をそそられた。
図鑑、小説、歴史書、あんな人間であったが、それなりに本を読む習慣があったらしい。食事のあとに一冊の本を手に取ったら、ついつい読みふけってしまった。気が付いたら夜が明けていたことに驚いたが、魚の焼けるにおいにつられて部屋を出ていった俺に、Aの妹は挨拶もそこそこに神妙な面持ちで尋ねた。
「･･････スマイルさん、ものすごく聞きにくいんですけど、洗濯物はどうしてますか」
「はあ、洗濯物」
「スマイルさんがこの世界に来て三日目ですよね。服は兄のものを着ているのは分かるんですが･･････その･･････」
「ああ、予め替えを持ってきてる」
「替え」
「ああ。Aにきみの様子を見てきてほしいと頼まれたのは去年のことだったけど、一応準備はしてたから」
「そうなんですか！？良かった･･････てっきり･･････いえなんでも」
「ふふ、心配してくれてありがとう」
お互い直接的な表現は避けたが、多分彼女は下着のことを言いたいのだろうと察した。と言っても、そろそろ洗濯しないといけない頃合いだ。それを見越してか、彼女は魚の焼き具合を見ながら何て事のないように呟く。
「洗濯だったらしておきますから、出しておいてください」
「え？」
「今、洗濯機まわそうかなーって思ってて。まだ入るんで一緒に洗いますよー」
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年1月21日 12時
