【WT】さよならを後ろから数える【sm】 (ページ14)

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Aの住居の付近を散策すると、随分と整備された町並みだった。
本当は、彼が音信不通になってすぐに妹の件が脳裏を過ぎってはいたのだ。ストーブに石油を入れてやって欲しい、なんて笑い話になるだろうと思っていたのに、彼は本当に姿を消してしまった。

鍵についていた猫のキーホルダーと依頼料といって無理やり置いていった黒の革財布が存在を主張していた。妹が結婚したと報告してきたら返すつもりでいたそれらはずっとデスクから見える位置に鎮座していたから。
こればかりは目の届く位置にずっと置いていた俺にも非があるかもしれない。猫の顔が、受け取ったからには約束を果たしてもらうぞとでも言わんばかりだった。

1ヶ月休みを取りたいとメンバーに伝えた時は事情を上手く説明出来る気がしなかったから療養と言った。Aとの約束を反故にしたら本当に体調を崩しそうだったから全くの嘘でもない。･･････おそらくは。
もしかしたら、何かを察していたかもしれない彼らはしっかり休めよとだけ言って深く聞いては来なかった。

彼の書いた住所通りの場所に行くときっちり彼の生家に着いた。

渡されていた鍵を使って部屋に入ると、Aが危惧していた通りやはり部屋は乱雑な印象を与えた。Aの妹は彼に似て少しだらしないところがあるらしい。勝手にあがるのはどうかと思ったけれど、板場の上で待たせてもらうことにした。