検索窓
今日:21 hit、昨日:6 hit、合計:9,913 hit

ページ12

「あ、そうだ。待ってる間、テレビでも見ますか」

「どんな?」

「あー、ええと、そうですね、なんか、こんなかんじの」



スマイルさんの傍まで駆け寄って、私はテーブルの上にあったリモコンを手に取って電源をつけた。ダイニングの広さからするとそこまで大きくない薄型のテレビは、ニュース番組件バラエティのようなものを映し出す。冬の特集、今、あのデザートが大ブーム!と流れたテロップに、スマイルさんは得心のいった様子で頷いているので、番組が気に入らなかったわけではないらしい。



「洗脳に使えそうだよな」

「はあ、洗脳ですか」

「一方的に偏った情報を発信し続けられればそれが正しいと思ってしまうのが人間だろ。例えば、今このデザートが人気らしいけど、その人気の基準とは?何人が食べ、何人が美味しいと思えば人気になるのか。明確な線引きがあるのか?」

「ああ、ないんじゃないですかね」

「つまり情報を発信する側はこのデザートを人気だと思わせることで何らかのメリットがあるのかもしれない」

「そんな真面目なこと考えてないで、気軽に見てください」



話を聞いてたら段々イライラしてきた。この一瞬でそこまで考えが進んだことは驚くべきことだけれど、それでもなんだか面倒くさい。私の語気がやや荒くなったことに気が付いたのか、スマイルさんはテレビ画面から視線を私に移す。
その双眸がこちらを向いた瞬間、呼吸が止まった。私の感情が昂ぶったことに対してなのか、僅かにその目が細められる。浮かんだ微笑は、どこか懐かしいものを見ているかのように優しい。



「ふふ、そうだな。悪い」



何だか馬鹿にされたような気がするのは私の思い込みか。私は眉根を寄せたまま、キッチンの方に戻った。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (70 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
77人がお気に入り
設定タグ:wt , 実況者 , sm
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:やなぎ | 作成日時:2024年1月21日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。