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両親が死んでからは兄と二人きりだった食卓だったけれど、一人になってからはそもそもダイニングテーブルに座ることも滅多になかった。昨日だって積んであったＤＭの山を片付けなければ食事を摂る場所も確保できなかったのだ。一人で暮らすには広すぎる３ＬＤＫは、掃除が苦手な私にとっては管理すること自体が難しい。
廊下の電球なんか一つ切れてるのをそのままにしてしまっているし。改めて冷静になってみると、家が汚い。今さらだけど非常にまずい。水回りだけはなんとなく掃除していたから見るに堪えないというほどではないけれど、全体的に乱雑だ。片付けなければ。本当に今さらだけど。
「おはよう」
「ひっ！？」
音もなくダイニングキッチンにやってきたスマイルさんにびくりと体を震わせる。どうやら朝目が覚めたら忽然と姿がなかった、というパターンは消滅したらしい。
「水とか色々使わせてもらった」
「あっ、そ、そうですか、全然、気にせず使ってください」
「ああ、ありがとう」
会話が途切れてしまった。きちんと顔を洗ってきたらしいスマイルさんは起き抜けとは思えないほどに爽やかで、私は言葉に詰まる。
既に着替えているスマイルさんに比べて、私と言ったら冬用のもこもこパジャマのままだ。恥ずかしさに胃が痛くなったけれど、今更慌てて着替えてくるのもなんだか違う気がする。私は「ご飯作りますね。座っててください」と声をかけ、カウンターのすぐ向かいにあるダイニングテーブルではなく奥のソファを指差した。あっちの方がまだ片付いているし、料理中も気にならない。スマイルさんは素直に私の言うことを聞くと、三人掛けの大きなソファの真ん中に腰を下ろした。
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作者名：やなぎ | 作成日時：2024年1月21日 12時
